0005=シリアスは、何故か『竜頭蛇尾』になる_土屋炎華リアル

 月曜日 12:30

 市立陣外高等学校


「ごちそうさまです」

 両手を合わせるゴー。

 周囲のゴーの大食いショーを見ていたクラスメイトが去っていく中、ゴーが言う。

「今夜、ヒドラに再戦するよ」

「へー、四字熟語溜まったの?」

 聞いてみると半眼になるゴー。

「金曜日から毎日要求してるのに四桁にもいかなかった!」

 憤慨するゴーの様子を面白そうにみるノブコ。

「必死に『起承転結』を要求するゴーの姿を観て楽しんでるファンが多いからね」

 そうなのだ、別段ゴーこと路姫は、嫌われているって訳じゃないんだけど、掲示板や視聴者投稿動画には、路姫不憫動画枠って奴が存在している。

 負け犬シャツ一覧動画なんて、ほんの少しの違いまで網羅したニッチな動画まであるしまつ。

 必死に必要な四字熟語を乞食する様子は、路姫ファン最大の愉しみとさえ言われる程だったりする。

「それじゃあ、どうするの?」

 改めてあたしが尋ねるとゴーが即答する。

「エンタメ要素を減らす」

「エンタメ要素を減らす?」

 思わずオウム返しするあたしに対してゴーが強く頷く。

「派手な斬り合いとか大技で倒すのは、もう諦めた。地道に削っていく戦法で行くことにした」

「それってパパPが一番嫌がる展開じゃん」

 ノブコの指摘に対してゴーは、肩を竦める。

「パパPは、ド派手な絵を求めてるかもしれないけど、このままヒドラにリベンジしないのもエンタメとしては、NGだからね。ここは、確実に勝てる手段を使っておくんだよ」

「負けた方が数値が取れるって話もあるけど」

 ノブコの更なる指摘に対してゴーが強く主張する。

「それこそ本末転倒、あのゲームの目的は、魔物を倒して異業を解消する事。それをおざなりにしない。それこそが大切なんだよ」

「なるほどね」

 あたしは、納得するがノブコが尋ねる。

「それで本音は?」

 少しの間の後、ゴーが呟く。

「勝つまでヒドラに食べられる動画のランキング入りが終わらなそうなんだよ」

 そういえば動画ランキング上位にとどめを刺そうと動いたゴーが唖然な顔をして食べられるシーンが入っていたっけ。

「あれって人気があるんだよね。チャンスだとキリっとした顔から一転、情けない顔をするのが大受け」

シミジミというノブコに対してゴーが拳を握りしめて宣言する。

「それを今夜覆す!」

 こうしてあたしは、ゴーのリベンジに付き合う事になった。



 月曜日 17:00

 5S宮


「って訳で絡め手でヒドラを倒す事にします」

 ゴーの宣言に対してその父親、パパPが不満そうな顔をみせる。

「無理に倒す事ないぞ。関連動画が再生数稼げているんだからな」

「だから嫌なの! どこの世界に自分が喰われる動画が永遠と再生され続けるのを喜ぶ人間がいると思って居るの!」

 ゴーの主張に対して、レイクグレートエルフこと愛称、小野小町さんが口にする。

「まあまあ、都土路姫様は、下々の下らない評価など気にせず、泰然とされておられればよろしいかと」

半眼のゴーが言う。

「知ってるよ。5Sの皆さんもあの動画を日参してるって。お祖母ちゃんに対する恨み辛みをあちきの動画で晴らすのやめよーよ」

 ゴーの指摘に5Sの皆さんは、視線を逸らす中、パパPが説得に入る。

「お前の気持ちも解る。だがな、ここで視聴者に反発しても逆に喜ばせるだけだぞ」

「反発ってただヒドラに勝つだけです」

 ゴーがそう反論するとパパPが淡々と告げる。

「散々、四字熟語を乞食しておいて、それを無しで攻略するのは、どう考えても視聴者に反感を買う。それが解らないのか?」

「それは……」

 口籠るゴー。

「だからここは、同じ失敗は、しないと『一刀両断』で斬って分裂させる方向で……」

「天丼ネタをやらせるな!」

 パパPの提案を途中で遮るゴー。

「実際問題、数字が取れている動画を殺すのは、どうかと思うぞ」

 ノブコの正論に対してゴーが頬を膨らませて不満を主張する。

「あのー一つ確認なんですが、再生数ってそんなに影響あるんですか?」

 あたしの疑問にノブコが苦笑する。

「実際に魔物を倒すのと比べれば落ちるのは、確かでヒドラを倒して解消する異業に比べたら些細な物。でもさ、確実に異業は、解消される。それも実は、ヒドラを倒したりするよりも真っ当な手段だったりする」

 あたしが首を傾げる。

「真っ当? 動画を見るのがですが?」

 デザートグレートエルフこと愛称、クレオパトラさんが言う。

「そうじゃ。我等が行っているゲームによる異業解消は、禁じ手と言わぬがあまり推奨されない方法なのじゃよ」

 ヴォルカノグレートエルフこと愛称卑弥呼さんが続ける。

「我等の力を使っては、どこまでいっても異業が増える。まあ、増加する割合より減少する割合が多いので実行しておるがの」

「だが、動画再生やライブ配信のコメント等は、この世界の人間による異業の塗りつぶしになる。減少率こそ低いがこの世界にとっては、より正しい解消法になるのじゃ」

 フォレストグレートエルフこと愛称楊貴妃さんも続けた。

「先々の事を考えるならば再生等を優先するのが正当であり、エンタメ要素の減少は、先細りの危険性が高いわ」

 ケイブグレートエルフこと愛称モンローさんがそう締める。

 ゴーの完全な不利な雰囲気の中、祖父の九郎さんが静かに告げる。

「根本的な事を忘れているな。ゴーがそれを気にしなければいけない理由は、なんじゃ? ゴーが嫌がる事を強要して良いのか?」

 その一言に誰も反論できないらしい。

「お祖父ちゃん……」

 嬉しそうにするゴーに九郎が笑顔を向ける。

「だがの、ゴーがヒドラを倒す為にそれ様の四字熟語を乞食していたのも確かじゃ。それを無視するのは、どうかの?」

「だけどさ、いっこうに集まらないし……」

 言葉を濁すゴーに対して九郎さんが告げる。

「一つ、解決方法がある。『竜頭蛇尾』、今回のコメントで増えたこれを使ったらどうだ?」

「えーそれって……」

 嫌そうな顔をするゴーだったが、影の実力者である九郎さんの鶴の一声でその線で行くことになったのであった。



 月曜日 18:50

 実況ブース


「ねえ、このビキニアーマーモドキどうにかならない?」

 あたしの要求にノブコが腕を交差させる。

「無理。ヒドラ退治ならこの格好だってパパPとDママの強い主張だから。それでもスパッツやシャツは、何とか死守したんだから諦めな」

 当初の案では、モロビキニアーマーだった。

 それをゴーと二人で必死に抗議してスパッツとシャツを確保した。

 元の案のへそ出し、ビキニラインモロだしに比べれば多少は、ましだけど、やっぱり恥ずかしい。

「それより、今回は、あちきのリベンジだから本格的にやる事なくなるけど参加するの?」

 ゴーが確認してくる。

「出来るだけ参加しろって言うのが上からのお達しなんだよ」

 あたしは、そう肩を竦めて告げる。

「悲しきは、宮使いって奴だね」

 ノブコが呑気に言い、ライブが始まる。

「今日もやってきました路姫奮闘ー四字熟語乞食上等ー! 今日は、ヒドラとのリベンジマッチだ! 前回しょっぱなからの大失態からの捕食エンドだった路姫は、リベンジできるのか!」

 相変わらずの高いテーションでの実況役のヨックーさん。

 ゴーとあたしが画面に出ると同時にコメントが流れる。

【ビキニアーマー!】

【なかなかの露出度!】

【うーんスパッツは、興ざめじゃないか?】

【何言って。露骨すぎる露出より、最後の一線を守ろうとしているのが良いんじゃないか】

【それに、これって激しく動けばヘソ見えだぜ!】

【スパッツの尻のラインが】

 こんなコメントが異業解消になるって事実があたしには、信じられない。

「因みにゲームエリアじゃないから四字熟語以外は、意味なし」

 ノブコのマイク無しの言葉に頭が痛くなる。

「皆のアイドル路姫でーす! 好きなファンは、あちきが欲しい四字熟語をくれるファンです!」

 直球を叩きこんでいくゴー。

【残念! そんなファンは、週間統計で一パーセント未満でした!】

【そうそう、『疾風迅雷』】

【またのやらかしを期待『一刀両断』】

 煽りにしか見えない四字熟語にゴーのほほが僅かにピクピクしてるのは、傍にいるあたしにしか解らない事だろう。

「紅です。今回は、単なるギャラリーなのにこんな格好させられています」

 あたしのローテーションの言葉にも反応がある。

【そこは、そこ。胸要因として必要なんじゃないかな?】

【JKのビキニアーマーなんてそうそう見れないからな】

 一応、ゴーもJKなんだけど、視聴者としては、その範囲に入らないんだろう。

「本日も解説を九郎さんにお願いします!」

 ヨックーさんの紹介に九郎さんが頭を下げる。

「よろしくお願いします」

 こうして、今夜もリアルゲームが始まる。



 月曜日 19:10

 Kーキル/殲滅 Dー007/ヒドラ


 ゲーム空間に移動して直ぐにゴーが自分の手首を切った。

 そこから血が零れていき、その血を使ってゴーは、魔方陣を描いていく。

 魔方陣の四方に漢字一文字が書かれた紙を設置し、ゴーは、髪留めにしている鈴を外す。

 魔力を帯びた髪が広がり場を作る。

「かしこみかしこみ」

 ゴーの詠唱が始まる。

「虚ろな神たる刀」

 ゴーが魔力を帯びた髪をなびかせながら舞う。

「牛若丸」

 魔方陣に魔力が展開されていく。

「都に張り巡らされし土の路を司る姫、都土路姫の名のもとに言霊を奉り給ふ」

 鈴を鳴らすゴー。

「『竜頭蛇尾』」

 魔方陣の四方の紙に書かれた字、『竜頭蛇尾』が激しく輝き、竜を模した柄ありし刀がゴーの手に握られる。

【フル補助じゃん!】

【レアのレア! 激レアだよ!】

【それよりリュウトウダビって何?】

【零捌零玖、『竜頭蛇尾』。竜の柄を持つそれは、切った相手の能力を弱体化させる】

【何、その地味な能力?】

【あ、俺相手がヒドラだからって面白半分に書いた】

【俺も俺も】

 コメントにある通り、今回ゴーが使う『竜頭蛇尾』は、当初求めていた即死系とは、正反対であり、その語感からなぜか多く書かれた四字熟語だったりする。

 過去動画で使うのを何度か見たけど、どれも本命の攻撃前の敵の弱体化でしか使われていない。

今回は、これでヒドラを倒そうとしている。

 どうやるのかは、説明されていない。

「それで本当にアレで勝てるの?」

 画面に映らない様にしてるノブコに尋ねてみる。

「実際問題、画面映えを気にしないんだったら、『疾風迅雷』でも勝てる。ゴーは、あれでも九郎さんの刀術を一番引き継いでるからね」

「九郎さんってそんなに強いの?」

 あたしの素朴の質問にノブコが唖然とする。

「歴史に残る英雄にそれ言う?」

「歴史に残る英雄って?」

 あたしが首を傾げるとノブコがほほを掻いている。

「あのさ、九郎さんがやっている番組知らないの?」

 あたしは、手を叩く。

「ああ『パラレル義経伝』だっけ。史実とは、全然違う源義経の話だよね」

 義経の恋人が異世界のエルフってトンデモ設定でかなり人気あったりする。

「あれ、事実。九郎さんの正体って、アレに呪われて不老不死になった源九郎義経だよ」

 ノブコがあっさりいうのであたしが尋ね返す。

「それってどんな冗談?」

「いや、これは、本当。史実で静御前って呼ばれているのがアレで、シースカイがいつの間にかに静って呼ばれていて、俗にいう義経四天王は、弁慶が便利で経済的ってベンケイってアレが呼んでいた鬼家令。名前考えたのが伊勢で決定稿が三つ目の欲もりもりからヨックーの伊勢三郎義盛。男性ボディーを使っていたタダのNOBUで佐藤四郎忠信がノブミ姉。九郎さん用に新しく作られた次のNOBUで佐藤三郎継信がノブシ兄だったりする」「……マジ?」

 信じられず聞き返すあたしにノブコは、珍しく真面目な顔で頷く。

「大マジ。因みに牛若丸に剣術を教えたって天狗は、ヨックーさんだったりするんだよね」

「天狗と四天王の一人二役って何それ」

 あたしの突っ込みにノブコが肩を竦める。

「ついでに言えば攻撃力が高いノブシ兄のが背が高いから三男扱いされるなんてボケもあるよ」

 パラレル義経伝の内容を思い出してあたしが確認する。

「あれって、頼朝が弟激ラブじゃなかったっけ?」

「そうそう、呪いの原因で身を隠す必要があった九郎さんの為に自ら悪役をしてくれるほどのブラコンだよ」

 ノブコの答えに遠い目をするあたし。

「事実は、小説より奇なりって言うもんね」

「そこ、いくらやる事ないからってゲーム中に雑談しない!」

 ゴーのクレームを受けてあたしが目の前の現実に戻るとリアルなヒドラが居た。

「で、でかいわね」

 軽くビビるあたしにノブコがバックする様に指示してくる。

「そこブレスの影響範囲だから下がる」

「了解」

 あたしは、素直にその指示に従う中、ゴーとヒドラの戦いが始まる。

 改めて見て見るととんでもない身長差である。

 ただでさえ巨体のヒドラに対してゴーの身長は、小学生レベルでライオンと猫が戦っているかの様相を見せる。

 ファーストアタックは、ヒドラ。

 その巨大な前足で踏み込み攻撃してきた。

 ゴーは、飛び下がる。

 あたしのところまで来る振動と突風。

 その突風が飛び上がっていたゴーを押し上げた。

 ゴーは、慌てず牛若丸の刀身をヒドラの足に突き刺す。

 刀身の裏にビキニアーマーの肩部分を付ける様にして押し上げられる力を暫撃力に変化させる。

「ぐごぉぉぉ!」

 ヒドラが高い声を上げて尻尾を振った。

 前足に突き刺さった刀にぶら下がっていたゴーだけど、体を揺らしてタイミングを合わせ、襲ってくる尻尾に両足で踏ん張る。

 当然の様にそんな力で防げるわけがなく、尻尾は、勢いを失わない。

 しかし、体を伸ばして柄を両手で握りしめていたゴーは、尻尾の勢いで深く突き刺さった刀身ごと押し出された。

「ぐげぇぇぇ!」

 ヒドラが悲鳴を上げるのも当然、前足が大きく切り裂かれたのだから。

 前足から解放されたゴーは、空中でくるくる回った挙句、地面を転がっていく。

「あれ大丈夫なの?」

 心配になったあたしの言葉にノブコが苦笑する。

「ダメージって奴は、力のベクトルに対して反作用が発生した時点に発生する。いまゴーがやってるみたいに力に逆らわずにいれば少ないんだよ。まあ、切り裂いた時にも多少の反作用が生まれてるからノーダメージじゃないけど、気にするレベルじゃないね」

 その言葉の正しさを証明する様にあっさり立ち上がったゴーは、苦痛に動きを止めているヒドラの左前脚を切る。

「ぐご!」

 痛みに睨むがヒドラは、動かない。

「あれって動かないんじゃなくて動けないの。斬られた右前足にダメージが回復するまでは、あの巨体が下手に動けば倒れるからね」

 何度も切り裂くゴーだったが、その傷は、最初に斬った右前足に比べると完全に浅い。

「あれって全然ダメージ与えてないよね?」

 あたしの指摘にノブコがゴーグルの設定を変更してくる。

 するとゲーム情報が表示されるゴーグル内でヒドラのシルエットが映し出される。

「あれ、大きさが全然違う」

 シルエットより実物の方が二回りほど小さい。

「ダメージ狙いじゃない。あれでヒドラを弱体化してるんだよ」

 暫くして右前足が回復するのに合わせて間合いを空けるゴー。

 それに向かって長い首を伸ばして食いつき攻撃に移るヒドラ。

「何度も食べられませんよ!」

 直前で垂直ジャンプしたゴーは、頭上に乗ると、ヒドラの頭部に刀を突き立てる。

「ぐがぁぁぁ!」

 一気に頭を上昇させてゴーを振り払いに入るヒドラ。

 ゴーは、ある程度の高さの所であっさりと離脱したと思うと今度は、落下の力を利用して首の後ろを切り裂いていく。

「ぐぎゅうぅぅぅ!」

 今度は、首を左右に振るヒドラだったが、ゴーは、その勢いに逆らわず、全身を左右に振られながら刀身を突き刺したまま降下していく。

 背中に着地すると一度刀身を抜いて、背中に刀身当てて駆け出す。

「ぐぐぅぐぅぐぅ!」

 ヒドラは、尻尾を使ってはたき落そうとするが、ゴーは、尻尾がくるタイミングを見切って姿勢を低くして躱しながら走り続ける。

 遂には、ヒドラは、自分の背中を叩く様に尻尾を上下に振ってくる。

 ギリギリまで引き付けた所でヒドラから飛び降りる。

「ぐぎょぉぉぉ!」

 ヒドラの一層高い悲鳴が聞こえてきた。

「尻尾で強くたたきすぎたの?」

 あたしの疑問に対してノブコがゴーの指さす。

「あれ、牛若丸は?」

 ゴーは、手には、牛若丸が無かった。

「角度を合わせてたからモロにヒドラの尻尾で深く埋まってる」

 この時点でゴーは、武器が無い状態。

「ごがぁぁぁぁ!」

 怒り狂ったヒドラが突進を仕掛けてくるがゴーは、のらりくらいとかわし続ける。

「牛若丸が無ければ攻撃できないじゃん」

 あたしの突っ込みにノブコが苦笑する。

「元から大事なのは、攻撃によるダメージじゃないよ。その再生力から痛みに鈍感なのがヒドラの弱点だね。ああやって動いて居るだけで牛若丸に思いっきり斬られているのと同じになるんだよ」

 その言葉の正しさを示す様にヒドラは、目に見えて小さくなっていく。

 そしてその大きさがライオンくらいになったヒドラを貫く様に出た牛若丸が地面に刺さって動きが大幅に抑制された。

 近づいたゴーが牛若丸を抜く。

「あちきの勝ちだね」

 勝ちを確信したゴーが上機嫌で間合いをあけた。

「さて最後は、どうやってとどめを刺してやるか」

 そんな中、ノブコがゴーサインを出す。

 あたしは、かなり罪悪感を覚えながら溜めておいた術具の力を開放して弱体化しきったヒドラの頭に炎を直撃させた。

「へ……」

 茫然とするゴーを尻目にヒドラは、消滅していった。



 月曜日 19:50

 実況ブース


「裏切者!」

 鴨が描かれたシャツに作り物のネギを背負わされたゴーの一言にあたしが言い訳をする。

「ヒドラのポイントが手に入るチャンスって囁かれたの」

 正直、最初言われた時は、流石に不味いだろうと思ったけど、パパPを筆頭にゴーを除く全員がOK出してたので乗る事にした。

「体よく利用された路姫は、まさに鴨葱でした」

 ヨックーさんの煽りに視聴者が一斉に乗る。

【なるほど、だからあの恰好なのか!】

【ヒドラのポイントを献上させられる。正に鴨葱WWW】

【あの衣装が用意されてるって事って路姫以外全員に嵌められてただろWWW】

【信じて背中を預けた仲間にハイエナされてらぁぁぁ!】

【不憫枠ご苦労様WWW】

 その後も徹底的に煽られ続けるゴー。

「とにかく、最後は、横取りされたけど、勝ちは、勝ちでしょ!」

 あたしもそうだろうと思って居たけど、ヨックーさんが視聴者に問いかける。

「路姫がそういってますけど?」

【えーとどめ刺してないんだから駄目じゃん!】

【そうそう、きっちりとどめ刺してないんだからリベンジならずだよWWW】

【そういう事で次は、『一刀両断』で頑張ってWWW】

「てめら人間じゃねえ!」

 ゴーの怒声にコメントに草が生え続けるのであった。

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