Stop Days
あなたが消えた日から、煙草を吸い始めた。
銘柄はよく分からないから
見覚えのある箱を選んで。
煙草の味は嫌いだけど、
あなたが燻らす煙を眺める夕方と
スーツに染み付いたそのにおいを
抱き締める時間が好きだった。
あなたが何も言わずに消えてしまったから、
この煙をふかすしかあなたに近づく手立てが無いような気がして。
あなたはまめな人だけど、
私はそうでないから
窓際のサボテンは枯れてしまった。
あなたの大切を殺してしまったようで
また、あなたが遠退く。
枕元に置き去りのメガネ。
左右バラバラの度数は君のためなんだから、
私には似合わない。
不恰好な私を笑って欲しい。
あなたが帰ってきたら、
二人でコーヒーを飲もう。
あなたはブラック、私はミルクたっぷりで。
正反対の色と味を
「美味しいね」の一言で分かち合いたい。
コーヒー豆を挽く、あの退屈な時間も
今ならなんともないから、
今日はグラム売りの豆を片手に帰宅する。
そして、もう跡形も無い
あなたの帰りを待ちましょう。
あなたのいない午前0時。
私は煙を受け入れて、
むせ返ることはもう無くなった。
私の肺が完全に毒される前に、
早く帰って来て欲しい。
夜の藍色には煙草の煙がよく映える。
【詩集】ノートの片隅に。 三丁目の望月 @kairanban4649
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