第13話

「分からないのなら放っておいて下さい。執務はお任せしますわ。ですが、白雪はわたくしに懐いています。あの子はわたくしのものですわ」


「ふざけるな! マルガレータはものじゃない!」


「城も、使用人も、宰相も騎士達も、白雪も全てわたくしのものですわ」


「本性を表したな……やはり悪女ではないか……!」


「わたくしに結婚を申し込んだのはそちらでしょう? わたくしは、正当な権利を主張しているだけです」


「結婚したくしてたんじゃない! いつまでも王妃がいないわけにいかないと無理矢理勧められたんだ! あの夜は、少しは美しいと思ったがやはりミレーユの方が良い!!!」


「ミレーユとは亡き奥様の名ですか?」


「そうだ。私が愛しているのはミレーユだけだ」


「でしょうね。わたくしの名を忘れているくらいですから」


「……」


「都合が悪くなると黙るのはやめた方がよろしいですわよ。ただでさえ陛下の評判は悪いのですから」


「なんだと?」


「まさか、自分の評判が良いと思ってませんわよね?」


「それは……だがそれも全部君のせいだろう! 悪女め! すぐに追い出してやる!!!」


追い出されるか。まぁ、仕方ないわね。出来たら白雪の成長を見守りたかったけど…… 。いけない、良い人になってる場合じゃないわ。


わたくしは悪女。

これからはこの男に必死で白雪を守って貰いましょう。


「白雪はわたくしを母と慕ってるのよ。白雪から2度も母親を奪うつもり? あの子が大きくなったら、わたくしが実権を握るの。だから貴方は黙って引き篭もってなさいよ」


悪女って、こんな感じかしら?

鏡にも言われたけど、前世を思い出したせいで色々甘くなってるのよね。


目の前の夫は怒ってるから、大丈夫よね?


ああでも、白雪の家庭教師は鏡にして欲しいわ。仕方ない。鏡を置いて行くしかないわね。


実家に帰ると面倒な事になるし、師匠の所にでも行こうかしら。……んー、それも面倒かも。


どこかでひっそり暮らすか……でも、白雪が心配だし……。


「離婚だ! この悪女め! 今すぐ出て行け!」


夫を怒らせる事には成功した。こんなヤツ愛想は尽きてたから離婚は良いけど、こんなにすぐ怒るのに白雪を任せて良いのかしら。やっぱり、鏡は白雪の側にいて貰う方が良いわね。


代償は、何を求められるかしら?

あの子を守る為だしなんでも用意しましょう。


「……かしこまりました。では、今すぐ出て行きますわ。せめて最後に白雪に挨拶をさせて下さいませ」


鏡に今後は白雪を守って欲しいと、お願いをしないと。


「駄目だ! 今すぐにこの城から出て行け! 命令だ!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る