第12話
「宰相の様子がおかしいからだ。やたら君を褒めちぎる。美しさを武器に国を乗っ取る気だろう。このまま国を君に任せる訳にはいかん」
やっぱりそうか。彼はわたくしを警戒している。出会ったばかりの頃の宰相や騎士団長と同じ目をしていたもの。
「結婚式の日に、わたくしに仕事をしろと命じて全ての権限を渡したでしょう? 権限を返せと?」
「ああそうだ」
「良いですよ。ただし、白雪の養育権は渡しません。冷遇するような父親に任せられませんから」
「白雪は……マルガレータは私の大事な娘だ」
「大事と言う割には放置でしたわよね?」
「病弱だと聞いていたし、構わない方が良いと思って……」
「責任を放棄した言い訳ですか? わたくしも白雪が挨拶に来てくれるまであの子の存在を知らなかったのですよ。おかしいでしょう」
「宰相が、再婚相手は気難しいから、子どもがいると伝えない方が良いと……」
ああ、どうしてこんな男の愛を欲しがっていたのかしら。
「人のせいにして、言い訳ばかりですね。それで、奥様が亡くなったのは白雪のせいですか?」
「そんな事言ってない!」
「言ってないけど、思ってますわよね? 宰相がわたくしを試した事、白雪を大事にするわたくしを信頼した事、使用人の態度からも、貴方が白雪を大事にしてなかったのは分かります」
「違う……そんな事はない……!」
「じゃあどうして、わたくしに白雪を紹介しなかったのですか?」
「だからそれは……宰相が……!」
「いい加減、人のせいにするのをおやめなさい!」
「お前に私の何が分かる!」
「分かりませんわよ。お会いするのは3回目、まともに会話したのは今日が初めてなんですから。だけど、白雪の事は貴方より分かる自信がありますわ!」
「白雪は私の子だ!」
「わたくしの子でもあります! 貴方が奥様を偲んで嘆いている間、使用人や貴族達が白雪を蔑ろにしていたのですよ! 貴方が、白雪を放置していたからです。わたくしが命じなければ、最低な家庭教師は今も白雪に鞭を振るっていたでしょうし、料理長は粗食しか出せないままだったでしょうし、使用人の半分は白雪を馬鹿にしたままだったでしょう! そんな人に可愛い娘を任せられません!」
「それは……」
「正直に仰って下さい。貴方は、白雪を……マルガレータをどう思っておられるのですか?」
「分からない」
お父様もそうだった。わたくしは、単なる駒として扱われるだけ。お兄様は可愛がってくれたけど、お父様はわたくしに無関心だったわ。
この男も、同じなんだ。
白雪の事を、気にしてなかった。食事の命令は、単純に亡き奥様と同じ事をしろという意味しかなかったんだわ。
でも、料理長の命令を解除してわたくしから国を守ろうとはしている。それなら……わたくしが物語の通り悪役になれば、白雪は実の父親から愛されるのではないかしら。
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