第14話
「誰ですか?! お母様を虐めないで下さい!!!」
頭に来た国王が、わたくしを部屋から追い出そうとしたところでちょうど鏡と白雪が現れた。白雪はわたくしと国王の間に割り込み、小さな身体で震えながらわたくしを庇う。
「ま、マルガレータ……?」
「はい。わたくしはマルガレータ・フォン・ヴァルデックです。貴方がどなたかは存じませんが、彼女はわたくしの大切な母。この国の女王です。無礼な真似はやめてください。今すぐ、母から離れて下さい」
し、白雪ぃ……!
なんて凄いの?! この間まではあんなにオドオドしていたのに、こんなに毅然とした態度を取れるようになったのね! 凄いわ!
「白雪姫様。お見事です。ですが、お相手の確認を怠ってしまわれましたね。女王様に乱暴出来る人間はこの国ではたった1人です。お初にお目にかかります。国王陛下。白雪姫様の家庭教師を務めております鏡鏡花と申します」
「ふん。異国の者に王族の家庭教師など務まるか。お前もクビだ」
ちょっと!
鏡をクビにされるのは困るわ!
あーもう! テキトーな偽名でも名乗らせれば良かった!
「鏡先生、この方がわたくしのお父様なのですか?」
「そうですよ。女王様を追い出そうとなさっていたのは分かりましたよね?」
「はい。お母様を助けなきゃと思って……!」
「その行動力と、勇敢さは素晴らしいものですわ。ですが、敵を見極めないと。女王様を追い出せるのはこの城では1人だけ。貴女のお父様だけなのですよ」
鏡は怒ってるわね。国王だと分かってて敵扱いしてる。白雪に敵と言われて、国王は固まってるわ。
「勉強になります! ありがとうございます先生!」
「わたくしはクビになってしまいましたので、もう白雪姫様の教師ではありませんわ」
「そんな……!」
白雪は、泣きそうになっている。
「鏡! 白雪を泣かせないでちょうだい!」
「白雪姫様を悲しませているのはわたくしでも女王様でもありません。国王陛下ですわ」
あ、これは相当怒ってるわ。
「お父様、お久しぶりです。マルガレータですわ。白雪と呼ばないで下さいまし。鏡先生は立派な先生です。クビにするなんて言わないで下さい」
「わ、分かった。クビは無しだ。だが、この悪女は追い出す。マルガレータ……お前の母はミレーユだけだ。今まで放っておいてすまなかった。今後は私が白雪の面倒を見る。だから……悪女の事は忘れなさい」
「悪女? まさか……お母様の事ですか?」
「白雪の母はミレーユだけだ!」
「白雪と呼ばないで下さいまし! お父様、わたくしはミレーユお母様が亡くなってからずっと寂しかったですわ」
「そうだろう。申し訳なかった。だからこんな悪女に騙されて……」
「寂しかったわたくしを救ってくれたのは、カタリーナお母様です。わたくしにはお母様が2人いらっしゃるのです。カタリーナお母様は仰いました。わたくしを育ててくれたミレーユお母様の事はずっと大事にしろと! カタリーナお母様は出会った時からお優しいわたくしの大切なお母様です! お母様、城を出て行くのならわたくしも連れて行って下さい。お願いです……! わたくしを1人にしないで……!」
「白雪は1人じゃないわ。お父様も、使用人達も、宰相も騎士たちもみんな貴女が大好きよ。鏡先生だってクビを免れたのだから、ずっと貴女を助けてくれるわ」
「だけど……お母様は居なくなってしまうのでしょう?」
「そうね。今すぐ出て行けって言われたから。国王陛下の命令には逆らえないわ。大丈夫、白雪にはたくさんの味方が居るわ。頼むわね、鏡先生」
「……承知しました」
「嫌です! お母様が出て行くならわたくしも出て行きます!!!」
「白雪……貴女はこの国の姫なのよ?」
「そ、そうだ! こんな悪女に騙されるな白雪! この女は、白雪を操って国の実権を握ろうとしていたんだ!」
「白雪と呼ばないで下さい! お母様は女王です! 元々実権を持っておられるのに、わたくしを操る必要なんてありません! わたくしが邪魔なら、会った瞬間に追い出す事も出来た。それなのに、お母様は優しくわたくしを抱きしめて下さったんです! お母様、出て行かないで下さい! わたくしを……この国を捨てるのですか?!」
「わたくしだって、白雪の側に居たいわ。民や使用人達の事も心配よ。けど、国王陛下の命令には逆らえない」
わたくしは悪女。だから、わたくしの事は忘れて幸せになって欲しい。
「……お父様、お母様とは正式に離縁なさったのですか?」
「いや、まだだ。だが、必ず離婚する」
「そうですか。わたくし、少し用事を思い出したので失礼致します」
白雪は、なにかを決意して走り去った。鏡を呼んで連れて行った。ああ、走り去る姿も美しいわ。白雪ともう会えないなんて……悲し過ぎるわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます