第3話
「白雪、親しい使用人は居る?」
白雪の事を知りたくて、使用人から情報を集めようと思ったのに白雪は悲しそうに目を伏せてしまった。
「いえ……。毎回食事は扉の外に置いてあるので誰とも会わないのです。週に3回、家庭教師の先生とお話しするくらいです」
プチン。
王族よ?! 着替えはどうしてたのよ?! 大体、食事を外に置くなんて危険過ぎる。毒を入れられたらどうするの?!
毒林檎を作ろうとしたわたくしが言うのもどうかと思うけど、王族に対する扱いではない。
「宰相」
「は、はいぃ!!!」
「明日の朝、城中の使用人を集めなさい。それから、今まで白雪がどんな環境にいたか、包み隠さず報告しなさい。今日中に。深夜でも構わない。必ず、今日中に報告しなさい。嘘は許さないわ」
真っ青になった宰相に耳打ちして、正確な報告を上げればご褒美として髪を生やしてあげると言えば、喜んで出て行った。嘘を吐いたら大事な髪の毛を全部抜くと脅しておいたから、正確な報告が上がってくるでしょう。
「白雪、ひとりの食事は好き?」
「いえ……寂しかったです。以前はお母様と食べていた事が多かったので」
「なら、今後はわたくしと食事をしましょう。お父様もご一緒出来るようにお願いしてみるわ」
白雪が、嬉しそうに頬を赤らめた。可愛い。世界一可愛い。
食事を与えて、家庭教師を付ければ良いわけではない。これは立派な情緒的ネグレクトだ。
だからこそ、初対面のわたくしにこんなにも懐くのだ。白雪を守るべき父親は何をしてるのよ?!
「白雪、お父様とお話ししたのはいつ?」
「えっと……お母様が亡くなってからは……お話しした事なくて……」
育児放棄?! せめて使用人に指示くらい出しなさいよっ!!! 国王が白雪の事をちゃんと指示していれば、こんな事になるわけない。
「白雪、今から時間はある?」
「は、はいっ!」
「お父様の所へ行きましょう」
わたくしを放置するのは政略結婚だから仕方ない。けど、自分の娘も放置、政務も放置……だったらアンタは何してんのよ。
怒りが沸々と湧いてくる。
「だ、駄目です! お父様のお部屋には、決して誰も入ってはいけないのです。うっかり入った使用人が処刑されたと聞きました。せっかく優しいお母様が出来たのです。お願いです。わたくしを1人にしないで……!」
白雪は、また泣き出してしまった。
「分かったわ。今は行かない。だから安心して」
白雪姫は、物語では狩人に森に誘われて殺されそうになる。仕組んだのはわたくしだけど、そもそも姫が狩人の言葉を信用してホイホイついて行くなんて、きっと誰とも話せなかったから寂しかったんだわ。
こんな環境なら、唯一会話をする家庭教師に懐きそうなものだけど白雪から家庭教師の話を聞いても厳しい先生だと言うだけ。
これは、家庭教師も調査が必要ね。
泣いてる白雪姫を慰めながら、ふと鏡を見る。そうだわ。この鏡はなんでも答えてくれる魔法の鏡。
宰相を待つまでもない。
知りたい事は、全て鏡が教えてくれる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます