1-3. 鳴り始めたイレギュラー
1-3-1. 普段なら(灯子Side)
とある平日の夕方、私は自室の椅子に座って英語のテスト勉強をしていた。
勉強自体はあまり好きじゃない。特に英語に至っては、長い文章を見る度に「何で数学の記号みたいのが集まっているんだ」と考えてしまってなかなか頭に入ってこない。英語詞の曲はよく聴くけど、それとこれとは話が別だ。
かといって、「勉強できなくても何とかなる」みたいに割り切れるわけでもない。以前、全く準備せずに英語のテストを受けたところ、赤点を取ってしまって何度も追試を受ける羽目になったことがある。その時の面倒さに比べれば、今の状況の方がマシだと思う。
ある程度、英語の長文に頭を慣らしたところで、私は普段よりも強い空腹を感じた。頭を使い過ぎたせいなのか、体が甘い物を欲している。
菅澤家の三人はほぼ家の外(私の場合は篠塚家)で食事を済ませるので、菅澤家の冷蔵庫にはほとんど何も入っていない。だとすると、篠塚家の方に行くしかない。
思い立った私は部屋の窓を開けて、最短距離でそこへ向かおうとするけど、篠塚家の方の窓が施錠されていた。章悟はまだ帰ってきていないみたい。
私は窓から地面に降り立ち、遠回りをして玄関の方から鍵を使って篠塚家に入り、ダイニングの冷蔵庫を開けた。「甘い物」が見当たらないので、冷凍庫の方も探してみるけど、そこにも無い。冷凍食品がいくつか入っているけど、「うどん」とか「コロッケ」とかそういうものばかりだ。せっかくここまで来たのに、「甘くない物で妥協しよう」なんて引き下がれない。
毎日のように篠塚家に来ているとはいえ、私は「どの食べ物がどこにあるか」を把握していなかったことに今更気付いてしまった。基本的に「章悟が出した物を食べる」というパターンで、普段ならそれによってこの空腹は満たされる。
でも、今は違う。変なタイミングで私は腹が減ってしまい、そんな時に限って章悟がまだ帰ってきていない。
一体、何をやっているんだろう。章悟の普段の行動に干渉するつもりはないはずなのに、なぜだか腹立たしくなってくる。
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