第12話 夢みたいな生活
- ノノ視点 -
結局、間取りはまったく決まりませんでした。
まだベッドもないので、今日はハンモックを吊って寝るらしいです。
「じゃあ、ちょっと資材置き場からハンモック取ってくる」
ご主人様が見えなくなったあと、さっそく私はバセッタの肩を掴みまして。
「聞きましたか!? ハンモックですよ!? 床じゃなくて!」
「ご主人の優しさが身にしみる……」
「ねー!」
「いや君たち、床って……」
なぜかアルルカが引いています。
「え? 床じゃないとこで寝れたんですか? アルルカも〈忌み子〉ですよね?」
「ま、まあ……うん。ボクはけっこう恵まれてたから」
「へー、いいなー」
藁ぐらいはもらえたんでしょうか。それとも布? うわあ贅沢!
あ、でも布敷いたって床は床ですね。
「ってまさかベッド!? 王侯貴族ですか!?」
「王侯貴族じゃなくたってベッドに寝るんじゃないかと思うよ!?」
「甘いですねアルルカちゃん! 現実はそんなに甘くないんです! そんな砂糖みたいな価値観じゃ忌み子ライフに耐えきれず溶けちゃいますよ! もう砂糖水ですよ砂糖水! アリにたかられちゃう!」
「アルルカ、覚えておいて……アリにたかられるのは最悪……」
「え?」
「あー。部屋がアリの巣だらけだった時ありましたねー! なんでアリって酸っぱいんでしょう。もっと美味しく食べさせて欲しいです」
なんかアルルカちゃんが絶句しています。どうしてでしょう。不思議。
「あの……君たちってどういう生活を……?」
「子供の時に売られてから色んなところを渡り歩く普通の人生ですけど。私、運がいいんですよ! ずっとバセッタと一緒だったんですから!」
「ね。だいぶ運がいい」
「そ、そうかな……?」
「アルルカちゃんも〈忌み子〉なら、そんなもんなんじゃないですか?」
「えー……っと……」
彼女はぎこちなくうなずきました。やっぱり。
「天国みたいですよ! こんなでっかいところに個室作ってもいいなんて!」
ほんと、あのマフィアの怖い人に買われたときはついに人生終了かと思ったんですけど。えっちな服着せられるし。質のいい服でちょっと嬉しかったけど。
でも相手があのイカついロリコンのおっさんじゃーなー、みたいな。
……ふふふ。あの服、今もばっちり隠し持ってるんですよね。
血のシミだらけですけど。いつか綺麗に洗濯してご主人様に見せよっと。
「そういえば、私達をご主人様が助けてくれたときの話ってしましたっけ?」
「いや、ボクはまだ聞いてないな」
「なんか血まみれの怖い人が来たから、私達もついでに殺されるんだろうなあ……って思ってたのに、なんと声をかけて気遣ってくれたんです!」
「大丈夫か、って。夢みたいだった」
「そのあと後ろの私達を守りながらマフィアの人たちをボコボコに倒してたんですよ! もうお姫様気分ですよ! アルルカにもご主人様の勇姿を見せたい!」
「優しくて、強い……」
「こんな都合のいい白馬の王子様に拾ってもらっちゃってバチとか当たりませんかね、みたいな気分ですよねバセッタ!」
「うん」
あー、何回思い出してもカッコいいなあ。
陰のある雰囲気の血だらけ美青年、これだけでおかずのいらない美味さですよ。
妄想をおかずにアリが食べられますね。しなくても食べられるけど。
しかも、そんな人が私達に優しくしてくれて……。夢ですか?
もしかして私の精神は崩壊してて、都合のいい夢とか見てるやつですか!?
「ぐにー」
「……ノノ、何でほっぺ引っ張ってるの?」
「もしかして夢かなーって」
バセッタも同じように頬を引っ張ってますね。
手伝ってあげよう。えい。
「いたい」
「ふふふ。普段引っ張られてる分の仕返しですよ」
「この……」
ぎゃん! 尻尾引っ張られた! やりやがったなこいつめ!
「お前ら、何やってんだ?」
引っ張り合戦を繰り広げていたら、戻ってきたご主人様に呆れられてしまいました。主にバセッタが悪いと思います。
……これだけ引っ張っても覚めないんだから、夢じゃないですよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます