君の後悔

「.........久しぶりだな」

「あぁ。」

「話の腰、折っちゃったか。すまん」

「いいや、気にするな」

スプーンでアイスを掬って口に入れる。それを数回繰り返して水を飲むと、再び彼は話し出す。

「とにかく、もう俺には勉強しか残ってない。いつまで経っても、俺には後悔だけが積み重なっていく。いつになったら贖罪が叶うんだろうな」

自嘲的な笑みを浮かべてまたアイスを食べる。その諦めの態度が、苦しく感じる。

「なら、やるしかねえな」

そんな重い空気をとっぱらって、瑞希は広川くんの肩をとる。

「やることはやったんだ。やれない後悔よりよっぽどいい。人を恨んで何かが晴れるなら、とっくにお前は眠ってる友達のことなんか気にしてないだろ」

「だからな、今は楽しく過ごそうぜ」

「瑞希、仕事をしなさい。ほら持ってって」

ふふっ、と思わず笑いが零れて、それにつられてみんな笑い出す。

こっちのほうがいい。

「夏休みは、どうする?」

「そりゃあ勉強」

「そりゃあ、遊ぶに決まってるよな?」

瑞希は半ば広川くんの話を遮った。少し不満そうに顔をしかめる。

「これから勉強を始めないと、俺が目指すのはそういうところなんだ」

「でもさ、まだ私たちは受験生じゃない」

青春ラブコメみたいな作品の登場人物は高2から受験勉強とか言ってるけど、それは合ってるけど間違ってると思う。あんなのはきっとフィクションどからそんなことが言える。

「私は、みんなで楽しく夏休みを過ごしたい。広川くんはそうしたくないの?大学受験が1回で決まるように、私たちの高校生活もたった1度きりだよ。それでも後悔しない?」

ただ、彼にも楽しんで欲しい。きっとこの楽しみも贖罪になるから。

「それに、毎日遊ぶわけじゃないよ。ね?」

「えっ、あ、ああ。そうだな!」

「言質はとったんだからさ、遊ぼう」

ガックリと肩を落とす瑞希。ごめん、でもそうじゃないと彼はきっと心を許さないだろうから。

「よしっ!そうと決まれば、どこで遊ぶかだよね」

「まずは、決まってんだろ」

さっきの勉強の件は彼の頭の中から洗い流されてくれたみたいだ。良かった。

「それで、それはどこなんだ」

彼は思い当たらないらしい。私は一応彼らの幼なじみだから、言いたいことはだいたい分かった。

「えっ?大翔く〜ん。君が今住んでるのは何処かな?」

「急に馴れ馴れしいな。まぁいいか。それと何が関係あるんだ」

「だーかーら。ここは海沿いの街。とすれば夏に行く場所はただ一つ!」

「そう、う」

「海だーー!」

「私の台詞を奪うなー!」

千紗は大翔に襲いかかった。

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