休日は遅く起きがち
金曜日の夜ほど、遅くまで起きていたくなるような日もないような気がする。1時を超えて寝た次の日は、やっぱり9時くらいに起きてしまう。
「もう出るからねー!」
母がパートのために家を開けるので、習い事から帰ってくる妹のために私は起きざるを得なくなる。重い体を無理やり起こして、携帯を見ると、1件の連絡が入っている。開くとどっかに出かけないか?という瑞希からのメールだった。
「どうしようかな」
今から料理をしておけば、書き置きで妹にご飯は残しておける。宿題はあるけど、まぁいいよね。
「いいよ。どこに集合?」
と、メールを書いて携帯を閉じる。すぐに携帯が振動して、見るとバス停で!と書いてある。多分時刻はいつも通り。私はクローゼットから適当に見繕うと鍵を閉めて家を出る、鍵はいつもの場所に置いて。
集合場所に向かっていく最中、ランニングをしている男が前から向かってくる。だんだんと近づいてくるその人影はよく見ると、見たことのある顔だと気づく。
「あっ」
言われて正面の彼は走る足を止める。無言のままでいると、
「なんだよ」
といって走り出そうとする。なので、咄嗟に彼の服に手が伸びてしまった。
「だから、なに?」
「広川くん、だよね」
「.........ああそうだよ」
いつの間にか彼の手は下がっていて、防波堤に背を預けて寄りかかっている。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「早く言えよ」
「なんで、瑞希と仲良くしてくれないの?」
「瑞希?誰だそいつ」
「瑞希っていのは、こないだいた私の友達の一人で」
あたふたと説明する私の隣で彼は顎に手を当てて考え事をする。昨日のことだからすぐに思い出してくれたみたいだ。
「あいつがなんで俺と仲良くする必要がある」
「瑞希には地元に男友達がいなんいんだよ。けど、いつも同性の友達と話をしながら家に帰ったりするのが夢なの。だから、あなたにはその、夢を、手伝って欲しいというか、その」
「はっきりしねえやつだなお前も。俺は仲良くなんかできねぇ。そんな暇は無いんだよ」
彼は少し焦っているような、そんな焦燥感を漂わせている。
「なんで、そこまで人付き合いを悪くするの。何かしないといけないことでもあるの?」
彼はいっそうバツを悪くしたような顔をする。余計に彼の機嫌を悪くしてしまったのではないかとビクビクしていると、一言だけ呟いた。
「助けないといけない人がいる」
「え?」
「.........じゃあな」
再び彼は私が向かう方角とは反対にランニングを始める。彼の言葉が何度も頭の中で反芻していく。
「助けたい人。誰なんだろう」
この時の私はそんな子供じみた好奇心と、それ以上に彼自身に興味を抱いていた。
「あっ、間に合わなくなっちゃう」
時計を見て慌てて私は目的地に向かって走り出した。
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