二日目
二日目ー朝
<<朝の時間になりました>>
「ねぇ、ちょっといいかな?」
翌朝、私が起きて広間に行くと彼女たちはもうすでにそこにいた。ちょうどいい、昨日から聞きたかったことを聞こうと、私は二人に声を掛けた。
「あ、歌音先輩。」
「おはようございます、歌音先輩。」
「うん、おはよ。杏奈ちゃん、杏里ちゃん。」
そう、話を聞きたかった相手というのはこの二人なのだ。
「私達に何か用ですか?」
「あ、うんあのね。不安じゃないのかなって。」
「??」
私の言葉にきょとんとする二人。どうやら、うまく意図が伝わらなかったようだ。
「あ、ごめん。えっと、今の私達って誰が敵か誰が味方かよくわからないわけじゃない?なのに二人はそうやっていつもと変わらずにいちゃついてるというか。だから、不安じゃないのかなって昨日から不思議だったの。」
「…。「信じてますから。」」
困ったような顔で黙り込んだ安奈ちゃんに抱き着いて言葉を紡ぐ杏里ちゃん。しかし、その言葉の意味をいまいち理解できなかった私は、質問を返した。
「どういうこと?敵同士じゃないって、信じられるってこと?」
「それもありますけど。もし敵同士でいたとしても、一番に私の事を食べてくれるって信じてますから。私も一番に安奈の事、食べちゃうつもりですもん。」
「へ、へぇ…。そうなんだ…。」
「そうですよ、信じてるから怖くないんです。」
そう言ってにこっと微笑んだ、杏里ちゃん。その笑顔に何となくうすら寒さを覚えた私は杏里ちゃんから視線をそらす。と、安奈ちゃんと視線が合った。嬉しそうに微笑みつつも、困ったように少し悲しげにも見えるその表情に言葉を投げかけようと口を開いたのだが。
「せーんーぱーいー!!!」
「はぐぎゃ?!」
後ろからの衝撃に追突された。
「あ、璃華ちゃん。」
「えへへ、おはよー!」
声から察するに、璃華ちゃんなんだr、ちょ、…っかんせtきまっ…!?
「今日は早いんだね?」
「うん!実は本の読み過ぎで寝てないの!」
「…あぁ、徹夜明け…」
「だからハイテンション…」
後輩たちは和やかに会話してるが、私は徐々にあり得ない方向に固定された関節があげる激痛と呼吸できないこの状況で薄れゆく意識に抗えなくなっていた。
「璃華ちゃん璃華ちゃん」
「なんだね、杏里ちゃん。」
「…歌音先輩、顔が真っ青」
「え。」
「むしろ、真っ白だよ。離した方がいいとおもうよ。」
「はわわわわわ…」
混乱した璃華ちゃんはさらに私の首を締め上げる。
「…かふ。」
そして私は気絶した。
「ご、ごめんなさい!!ほんと。ごめんなさい!」
「い、いいのよ。わたしもびっくりして何もできなかったし…」
「で、でも…」
「ほらほら、歌音ちゃんも大丈夫だって言ってるし、ね?」
「…はぁい。」
気絶から目を覚ますとしょんぼりした顔で璃華ちゃんが私にあたまを下げていた。
「でも…」
「良いからいいから…」
「でも…」
「良いからいいから…」
『いつまで押し問答してるんです?』
進展のないやり取りを続けていた私達に、呆れたような声が降ってきた。見上げてみるとモニターからベルがほう杖をついてこちらを見ていた。その態度は明らかにこちらに呆れれていますという感じだった。
『開始時間はとっくに過ぎているのですよ?いつ終わるのかと見ていましたが…、いい加減にしてくれません?』
後、ずいぶんお怒りのようだった。
『二日目を始めます。謝る前に席についてください?』
しかも、謝罪すら受け付けてもらえないようだ。
しぶしぶと席について気付いたのは…二つの空席。
千乃の席と…
「…ねぇ、ハニーはまだ起きてきてないの?」
私と同じことに気が付いたのだろう。へらへらとしてた璃華ちゃんの表情が消える。
『やっ全員がそろわれましたね』
「何言ってるの?まだハニーがいないんだよ?」
ため息をつくベルと、問いを続ける璃華ちゃん。
昨日の夜には元気にしていて今いないという事は…
<<灯里の死体が見つかりました>>
<<討論を始めます。>>
つまり、そういう事なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます