一日目ー夕
終わりを告げる声がした瞬間、数人が顔を引き攣らせた。それは瞬時に別の表情に覆い隠されてしまったけれど、偶然とはいえ文芸部の皆様の笑顔の仮面の裏を垣間見れたかと思うと、少しうれしくなるものだ。
いざ議論をしようとしたときに再びあの声が降ってきた。続けて、ベルの声がする。
『時間になってしまいましたね。皆様建設的な話し合いは出来ましたか?』
「…あちゃぁ、時間使い過ぎた。」
ぼそりと誰かがそうつぶやいた。「夜」が明けたら今度はもっと時間を有効に使わないとな、と思った。
『投票は手元のメモ帳に名前を書いて、周りにいる黒子に渡してくださいな。』
その言葉と同時にどこから現れたのか全身真っ黒な服を着た典型的な黒子が…2人。彼らは私達からメモを回収してどこかに持っていったようだ。
「この人たち、は?」
『あぁ、紹介していませんでしたか?彼らはこのゲームの手伝いと屋敷の運営を手伝ってくれる私のこうは、…友人達です。』
「…オバケ?」
「違うよ璃華、ちゃんと実体あるし。…あ、昨日はお世話になりました。本、面白かったです。」
璃華ちゃんが怪訝そうに黒子たちをつついて、それに愛美ちゃんが言葉を返している。が、そのまま通り過ぎた黒子に少しだけ不思議そうな顔をした。
『あら、もう利用された方がいたのね。昨日言い忘れていたのだけど、部屋に備え付けてあるベルを鳴らしていただいて申し付けてもらえれば一通りのモノは用意いたしますよ。本でも、食べ物でも、ね。』
「…手に入れたもので逃げ出すかも、よ?」
『ご心配なく、そう言うものは渡さないように言ってありますし。そもそもここから逃げ出すなんて無理ですよ。』
「どうして断言できるんだ。」
『では、逆にお聞きしますけど、どうやって出るつもりなんですか?』
「それは…。」
『…、まぁあなた達がゲームに勝てば無事にここから出して差し上げますよ。勝てれば、ですが。』
「…どこまでも嫌味な奴だな。」
『あらあら、…さて集計が出そろったようです。今宵の犠牲者を発表させていただきましょう。』
どうやら、話している間に集計をしてしまったようだ。
『今宵の犠牲者は…、千乃様ですね。』
「え、…私?」
『えぇ、残念でしたね。では、黒子さん。お願いします』
「いったいなに、を…」
さっと千乃の後ろに回り込んだ黒子が、何かした途端くたりと机に倒れこんだ。
「いったい何をしたの!!」
『まぁまぁ、落ち着いてください。眠っていただいただけですよ。』
「ねむ、って?」
『えぇ、黒子さんに睡眠薬を注射していただきました。「死亡」した方はこちらが用意した別室に移動させていただきます。勝手に動かれても面倒なので、終わるまで眠っていただこうかと。』
「無事は確保されてるの?」
『もちろん。勝ってさえいただければ、全員無事にお返ししますとも。』
「…っ。わかった。」
「菜月先輩?!信じるんですか?」
「…信じるしかないじゃん。考えてもごらんよ、向こうは私達をどうにもできるけど私達からはどうする事も出来ないのよ?」
「そ。それは…。」
「…勝つしかないって事だね、このゲームに。」
『察しがよいようで、何よりです。さて、投票は終わりました。皆様、よい夜を。』
ぷつりと画面が切れて、黒子に部屋に押し込まれる。あ…、また話聞けなかった…。
<<夜の時間です。>>
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