肉の女神
彼女こそが肉の女神だと、私は確信していました。隠しても無駄です。下々の民には隠せても私には無駄なあがきであると、そう知らしめなければなりません。
「こんにちは」
まずは簡単な挨拶から。縁とはこのような行為から生まれるのです。私はこころからそう理解しています。彼女は少し戸惑いながらも同じように挨拶を返してくださいました。私のために、このような下賤たる私めのために縁をお結びいただけるとは……歓喜にむせび泣きながらも周囲の警戒は怠りません。いつ嫉妬したヒトが憎悪のままに害を及ぼすかわかりませんからね。もとから罪を重ねて生きている身であれば躊躇する道理がありませんから。
しかし、私も悪いのです。そう、悪です。私が彼女の神性、肉の女神であると暴くことを、知らしめることが使命であるといち早く自認してしまった私が。
「あのぅ何用でしょうか?どこかで会いましたか?」
「用といえばそうね……私は貴方の正体を知っています。この意味は貴方であればおわかりでしょう?」
目の前の女神の顔色が困惑一色になる。いきなりすぎたかしら、でも彼女につまらない地上の言葉を長々と聞かせるのは毒に当たる行為だと、彼女自身がよく知っているはずよ。
……女神様はいまだ固まっていらっしゃいます。
「まだ認めたくないのですか。貴方は肉の女神です。早く自認するのです!ヒトに取り込まれれば無為に飲み込まれますよ」
「……これって宗教の勧誘ですよね?結構ですので!近寄らないでください」
ぴしゃりとはねのけられてしまった。足早に私を撒こうというのね、そうはいかないんだから。
「待って、私には使命があるの……貴方の目を開かせる大事な使命があるの!話を聞いて!」
どっかのカルト宗教と勘違いされているみたい。とても心外……心の底から悲しいわ。私を体外へとはじき出す気ね。
2人(私と女神様を2人とくくるのはふさわしくなかった、反省します。)は早歩きで追いかけっこしています。早く落ち着いてもらわないと、周囲の人から怪しまれるのも時間の問題ね……。
「思い出してください。貴方は肉の女神です。地上に降り立ってからの時間が長くて」
「迷惑です。どっかに行ってください『 の正体を概念に固定だなんてね』」
「え?」
いつの間にか辺りはしんとしていて、わずかな喧噪さえまったく耳に届かなかった。それなりの大通りのはずなのに人どころか小さな虫さえも見受けられない。いや、そんなことよりも重要なことがある。
「貴方、誰?」
肉の女神?いや違う……これは、目の前の は何?
私は違和感を覚えふと自分の手をみてみると、腕がゴムのようにグネグネと曲がっていた。
「ぎゃああああああああああ!!!!!!!」
いたい……いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!!!!なにが、何が起こっているの!?手が、私の手が
「大丈夫『美しいですね。美しいものはいいものです』でssss?!」
あ、足も……ありえない方向にあ゛っ………………何も考えられ
「あ『星に対応する』ぇ『第一の弾丸』」
「こんあ、こんなはうでは」
ぶちっ………………
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
彼女は肉汁を発する球体の物体に成り下がったのです。人体から物体へ、死以外でこの変体を完遂するとは流石と言う他ないでしょう。 は何も言いませんでしたが。
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