おまけ 猫の名は

「お届けに来ました。エールペットショップのサイトウです」


 ミヤが初めて僕の家にきた。僕に会いに、ではなく猫を届けに。

 インターホンの画面越しに見るミヤは緊張した顔をしている。かわいい。今行くと答えて、僕は玄関に走った。


 ガチャ


「おまたせ。中にどうぞ」


 僕が言うと、顔を赤くしたミヤは


「あ、あの。今日はお届けに来ただけなのでここで」


と、カゴを押し付けた。


「玄関では猫が逃げるかもしれないから、部屋まで届けてくれると嬉しいな」


 カゴに入っているから逃げるわけないんだけど、そんなことに気付かないミヤは


「そうですね。逃げられたら困りますよね。……仕方ない。お邪魔します」


と言うと、靴を脱いで廊下に上がった。僕はカゴを受け取りミヤの手を持って部屋まで連れて行った。


「カゴ、開けてくれる?」


 僕がきくとミヤは部屋を見ていたのか、慌てた声で


「ひゃ、ひゃい。……あ、カゴですね。開けますよ」


と言って、カゴを開けると猫を抱えて僕に差し出した。


「はい。可愛がってあげてね」


 僕は猫を抱きしめた。その時ミヤの腕に僕の腕が触れたのはわざとじゃないよ。

 僕は猫の体温を感じながら頭を撫でた。


「猫の名前、決まったら教えてくれるかな?」


 そう言ったミヤは、猫を愛おしそうに見つめていた。僕はミヤに決めていた猫の名前を教えた。


「猫の名前はね、ミトだよ」


「ミト? 猫らしいいい名前ね」


 微笑んだミヤに僕は言った。


「ありがとう。ミトは君の名前ミヤのミと、僕の名前ジュートのトを合わせた名前なんだ。君と僕を繋いだ猫だからね」


「私とあなたの名前? それじゃ二人の子供…………うわっ!」


 真っ赤な顔になったミヤを見てたら、僕の顔まで真っ赤になってないか? ホントにこのは……


 「おっ、お邪魔しました。お店に戻ります」


と慌てて言って、真っ赤な顔をしたミヤは帰っていった。


 猫のミトは、何やってんだって顔で僕を見つめていた。




  ………………………………


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