最終話 ペットショップ
「いらっしゃいませ。あぁ、また来たの? 久しぶりね。……あの
彼女は、笑顔でそう言った。淋しげな笑顔で。
「あの……ミヤさん」
「なに?」
「抱いていいかな」
「えっ?」
「猫。……抱かせて」
「あ……うん。いいよ。最後だしね」
僕は彼女に檻を開けてもらい、猫を手渡された。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
僕は、成長した猫を抱えた。最初に見たときは本当に小さかったのに。
猫は緊張してるのか、体を強張らせている。警戒されてるのかな? 初めてランチ誘ったときの彼女みたいだ。
僕は、そんな彼女を好きになったんだ。
「かわいいね」
「……そうよ。かわいいのよ」
「あのさ…………この
「えっ?]
「この
「…………本当に? 買ってくれるの。……うそ……」
彼女は立ちすくんだまま、ポロポロと涙を零した。
「ごめん、遅くなって。金策と親の説得に時間がかかって……。君と別れた後、売れ残った動物がどうなるか調べたんだ。……ネットの情報が正しいかどうかなんて分からない。鵜呑みにする気もない。…………でも…………。この
彼女はポロポロと涙を零しながら、僕に抱きついてきた。驚いた僕は猫を手放してしまった。たまたまいた店長が猫を捕まえ、
「猫は売約済みにしておく。お前らもう帰れ。仕事の邪魔だ」
と、僕達を追い出した。店長なりの優しさだったんだろう。
◇
僕は彼女に言った。
「君が猫でも、何も持ってなくとも、僕は君の側にいるよ。だから、僕のこと名前で呼んでくれないかな」
彼女は頷いて、
「名前? うん。……あれ、なんか照れるね。……うん。……ジュウト。……ジュウト。……好きです。」
「僕もだよ、ミヤ」
照れながら僕の名前を呼ぶミヤが愛おしすぎてたまらない。僕は思わずミヤを抱きしめた。
きれいな夕焼け空の下で、「君を守るよ」と、僕はミヤにもう一度誓った。
(完)
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