第2話 本当に唐突な入学式


「―と、君達が立っているこの校舎には歴史があるわけだが―」

(いや、話長ぇよ校長……)


 俺は大勢の生徒達でびっしり埋まった建物の中に座り、げっそりしていた。……一体、何十分話してんだ。


 『ドゥーン魔法学校』。


 この大陸でも有名な魔法学校で数々のエリートを生み出しているらしい。


 一般的に子供達は一定の年齢になると学校に通うことを義務付けられているが、その中でも魔法を使う為に魔法学校に通う人間は多い。


 その中でもこの『ドゥーン魔法学校』は他とは別格だそうだ。


 ちなみに、俺と姉弟子であるミューイは師匠から魔法を教えられてはいるが、学校に通ったことはなかったりする。理由は師匠が親バカだから。


(それなのに、なんでまたいきなり学校……あれだけ娘と離れるの嫌がってた癖に)


 俺はそんなことを考えながら少し離れた場所に座るミューイの方へと視線を向ける。


 ミューイは一つ年上だから俺とは違って入学ではなく編入という形でこの『ドゥーン魔法学校』に入ることになった。


 そんなミューイは俺の視線に気付いたのか、睨み付けるような視線を向けてくる。


「……」


 俺はそんなミューイに軽く手を振って返すが、それを見た途端ミューイに視線を背けられてしまった。……酷い。


(……それにしても、魔法学校ねぇ)


 よりによってエリートばかりの通う『ドゥーン魔法学校』に通うことになるとは……どう考えても俺達の実力じゃ難しいだろ。


 それなのに俺達がこの学校に入れたのは理由がある。


「そこの学校、俺の馴染みがやってんだよ」


 師匠は昨日、驚く俺達の前でそう言った。……それ普通に身内びいきじゃん。


 しかし、師匠が言うには―


「ああん? あんな学校に俺の弟子が劣ってるわけねぇだろうが。きちんと向こうには実力測ってもらってあるから気にすんな。俺の口頭だがな」


 いや、気にするわ。


 っていうか、口頭だけで実力測ってもらったっておかしいだろ……。


(……まあ、笑い者にならないようにだけはしないとな。学校とか通ったことないし、田舎者丸出しになるのだけは避けんと)


 師匠が唐突なのは考えてみればいつものことだ。


 ある日、突然巨大な魔物と戦わされたり、かと思えば突然魔法を向けてきてそれを防げと言ったり……そんなヤバい出来事に比べれば、学校に通うなんて全然マシだしな。


 そう思い、俺は睡魔を抑えながらも校長の話を聞き入ることにした。


 だが、俺はこの時知らなかった。


 有名なこの『ドゥーン魔法学校』のレベルがどれほどのものだったのかを―。

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