山にこもって姉弟子と修業し続けてたら、いつの間にか人類最強になってた~田舎者と馬鹿にされたけど、都会のエリート学校のレベルが低すぎて悩んでる~

月下文庫(ゲッカブンコ)

第1話 こうして学校に通うことになった

「―レクト、ミューイ。お前達は今日から都会の学校に通え」

「はい?」


 そう言って師匠―俺の姉弟子の父親は俺達を見た。……いや、いきなりなんの話だよ。


 山にこもり続けてはや十年。

 俺はずっとこの親方の下でめちゃくちゃ面倒くさい修業をされてきた。


 そんな俺に「都会の学校に通え」だと?


「……さては師匠、昼間から酒でも飲んでるな?」

「馬鹿言え、酒なんぞいつも飲んどるわ」


 ですよね~。

 俺はあまりにもいつも通りな師匠に安心しつつも、なおさら師匠の言うことが分からず首を傾げた。


「じゃあ、本気で言ってんのか? 都会の学校に通えってのは」

「ったりめぇよ。冗談でテメェはまだしも、可愛いうちの娘を都会に出すなんて言うわけねぇだろうが」


 いやいや、それ言ったら俺もあんたの可愛い弟子なんだけど?


 俺が憎々しげに師匠を睨み付けていると、それまでずっと黙ってこの場に座っていたもう一人が口を開いた。


 目の前で豪快に笑っている師匠の娘であり、俺の姉弟子であるミューイ・イゾットだ。


 綺麗な金色の長い髪を苛立たしげに払いながら、ミューイは自分の父親を睨み付ける。


「ちょっと師匠、なんでレクトは良くて私は駄目なのよ。レクトはもう家族みたいなものなんだから冗談でもそういう言い方はやめて」

「え? 怒るところそっち? 学校のことじゃなくて?」


 急に声を上げた姉弟子の発言に思わず突っ込みを入れてしまう。……いや、俺も文句は言いたかったけどさ。


 そんな娘の言葉に師匠は頭を強くガシガシと掻くと、バツの悪そうな顔で向き直る。


「おっと、すまねぇな。もうお前ら結婚してると思ってたから普通に息子みたいなノリで冗談飛ばしちまった。悪い悪い、もちろんレクトは大事な俺の息子だ」

「ちょっと待って? なにをさりげなくすげぇ爆弾発言入れてるの?」


 してないよ、結婚。


「ちょ、ちょっと師匠!? な、何言ってるのよ!?」


 あっけらかんと言う父親に対して、娘はめちゃくちゃ動揺していた。そりゃそうだ。


 そんないつも通り馬鹿な師匠の冗談に俺は肩をすくめながら答える。


「ったく、ミューイのことも考えてやれよ。相手が俺でいいわけないんだから」

「え?」

「未だにミューイから一本も取れてないし、ミューイだって俺みたいな弱い男なんて嫌に決まってるもんな?」

「え? そ、そうね……」


 なんかミューイがものすごい落ち込んでる。……あれ? 俺、気遣ったつもりだったけどなんかミスった?


「……レクト、お前はちとあれだな。……駄目だ、うん」

「何が!? っていうか、そんな冗談飛ばす師匠に言われたくねぇよ!」


 呆れた様子で俺を見る師匠。……なんでこんなことに。


「ともかく……レクト、ミューイ」


 まだ顔を赤くしたまま体を丸めているミューイを横目に師匠は再び大きな声で俺達を呼んだ。


 そして、俺達の前に見たこともない綺麗な装飾の施された紙を見せ、そこに俺とミューイの名前が書かれているのを指で示して大きく声を上げた。


「明日から『ドゥーン魔法学校』に通え、以上」

「「は!? 明日から!?」」


 これまた唐突な師匠の言葉に、俺とミューイは声を重ねて驚いたのだった。


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「月下文庫」という個人レーベルで出版しています!

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