第7話

 ザクッ


 姫さまにあたった矢は逸れ、じめんにささる。ペンダントで防がれたのだ。

 衝撃でたおれた姫さまのしろい胸元に血がにじむ。ペンダントがない。くさりが切れてどこかにおちたのだろう。


 木のうえでは生いしげる枝葉のあいだにギラリと鏃がひかる。

 第二の矢がはなたれた。おれのあばら骨をかすめ筋肉をごっそりそいだが、ひるまないのがとりえだ。

 おれがナイフをなげるほうが一瞬はやかった。


「うっ……!」


 曲者は木からすべりおりた。ハーフエルフの女だ。右うでから血をながしている。もう弓はひけまい。

 しかしそのまなざしは殺意にみちている。


「先祖の森を焼いた魔王の一族を殲滅してやる!」

「それは姫さまのやったことではないぞ!」

 女は聞いていなかった。


「何が五弁の花の乙女だ! 魔王に蹂躙された亡国の忌み子のくせに!」


 さけびながら突進してきたのをとりおさえた。

 姫さまが苦しそうに声をしぼりだし、ハーフエルフの女にかたりかける。

 

「忌み子で何が悪い……! 勝手に孕ませ、産んでおいて……何が忌子か。……そうは思わない?」


 女がふるえるこえでつぶやいた。

「その言葉……子供のうちに聞きたかったなあ……」


 ところで今、むねがものすごくいたい。

 この女は取り押さえたときに左手に矢をもっていておれを刺したのだ。

 それにしても、こんなに痛いのはもしや死んだとき以来ではないか。


 姫さまは気づいていない。

 姫さまには勇者とのやくそくがあるのだから、気づかせてはならない。

 女がどこかへ去るまでは。


 ふと、なにか羽根のあるちいさなものが舞ってきた。それを追うようにあらわれたものがいる。エルフのシャーマンだ。

 ちいさいものはその肩にとまった。


「アーチャー、探しましたよ」

「みんな……」


 あとに人間たちが続く。剣を帯びたわかい男と女、そして尼さんだ。


「また会ったな……勇者たちよ」

 


 (続く)


 (次は最終回!)



 

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