第34話 思いっきりぶっ飛ばせ!
準決勝は、一回戦の第四試合で完走したのはわたし一人だったから、準決勝は三台のレースになった。
わたしはここでも安全運転をこころがけた。そして一位になった。わたしの後ろには一台のドローンしか走っていなかった。
わたしは、完走ねらいの安全運転で、決勝に進出した。
「ラッキーだったね」
「ラッキーじゃないよ! 作戦勝ち‼︎」
わたしはムッとしながら、
「いや、完全に
「ほら、タイムが物語っている。さっきの
ブルブルッ!
わたしは、武者ぶるいがした。
ステージ上では、司会の人とほのかさん、あと解説の人が喋っている。ドローンメーカのえらい人らしい。
「ほのかちゃんは、誰を応援するの?」
「もちろん、一回戦で戦った
「
「はい。
「本当ですか⁉︎ いやー、がぜん期待しちゃう!
「あとは、やはり昨年のチャンピオンの
ステージ上では、会話がつづいている。
「
「あくまで、今のタイムがってことだよ」
「うん。去年のチャンピオン
わたしは、
「決勝も安全運転の方がいいかな?」
「わかんない。てか、もう
「そっか……」
わたしは、悩んでいた。いや、本当はもうとっくに、どうしたいかは決まっている。自分の気持ちはハッキリと決まっている。わたしは、もうひと押しが欲しかった。
アリアちゃんが消えそうな声で聞いてきた。
「……
アリアちゃんは、顔をまっかにして話をつづけた。
「……そ、その
アリアちゃんは、顔を真っ赤にして、本当に真っ赤にして、水色のワンピースのすそをぎゅっとにぎって、消え入りそうな声でつぶやいた。
最後の言葉はちょっと聞き取れなかった。ちょっと何を言っているか、わからなかったけど、わたしは、アリアちゃんが何を言いたいのか、すごくわかった。ものすごく理解できた。
ばっしーーーーーーーん!
突然、背中の後ろでおっきな音がした。
首をひねると、
そして
「そ、その、ドローンは、カンペキに整備しているから……アルミプレートも、斑鳩の筋力があがったから、ラバー素材のすべりどめをつけたのが功を奏していると思う……」
「そーゆーんじゃないと思うんですけどー」
「……つ、つまりだ! ガンバレ!
ブルブルブル!
わたしは、ふるえた。そして背筋がゾクゾクっとした。
そして、モヤモヤと心の中でくすぶっていた気持ちが、北風にふき飛ばされたみたいにすっとんでいった。
「うん! 思いっきりぶっ飛ばすね!!」
「さあ、いよいよ決勝線! 選手の入場です!」
司会の人が、ステージで叫んでいる。
わたしは、勢いよく車椅子のコントローラーのレバーを前に倒した。
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