第16話 きっと、わたしの片想いだ

斑鳩いかるが、プロポを足に挟んで操作しているだろ? でもあれだと安定しないから、本来の実力が出せないと思ってさ、車椅子に、プロボホルダーをつけたらどうかなって思ったんだ」


 そう言って、代田だいだくんはスケッチを見せてくれた。車椅子に、アルミのボードを固定して、両手を置けるようにする。そしてそのボードの上で、プロボをにぎって操作をする。これらな、ふつうにプロポを持つのと大差ない。


「だからちょっと、車椅子のサイズを測らせてほしいんだ。車椅子に取り外しできるようにして、ドローンを操作する時だけ装着できるように作るから。斑鳩、ちょっと車椅子から降りてくれないか?」

「うん」


 わたしは、車椅子を動かして、工房に置いてある椅子に座ろうとした。すると、


「せまいし、工具も散らかっているから危ないよ」


 と言って、わたしの前に手を広げて立った。そしてわたしはあれよあれよと言う間に抱き抱えられた。お姫様だっこだ。胸がこれでもかとドキドキする。耳まであつくなっているのがわかる。


 ドキドキしているのがバレないかな?

 顔が赤くなっているのがバレないかな?


 代田だいだくんは、わたしを軽々とかかえて、椅子まではこんでくれると、ゆっくりと椅子に座らせてくれた。


 代田だいだくんは、金属製の定規をつかって、わたしの車椅子のサイズを図っている。すっごく楽しそう。

 そしてわたしは、楽しそうな代田だいだくんの横顔を見ながら、ちょっと今更のことを、はっきりと、意識をしし始めていた。


 わたし、やっぱり代田だいだくんのことが好きなのだと思う。


 代田だいだくんは、夢中になって車椅子のサイズを測ってメモを取っている。そして、そのメモを取り終わると、笑顔で振り向いた。


「今から斑鳩の車椅子に合わせて、アルミの切り出しをするけど……見る?」

「うん!」


 わたしが、笑顔で言うと、代田だいだくんはわたしをお姫様だっこをする。わたしは、目をあえあせるのがはずかしくて、代田だいだくんの胸に、顔をこすりつけた。


 代田だいだくんは、わたしを注意深く、注意深く、車椅子に乗せてくれた。わたしは、


「……ありがとう」


 って、言った。だっこしてくれたお礼を、勇気をふりしぼって言った。すると代田だいだくんは笑いながら、


「お礼は完成してから言ってくれ」


 って、言って、うれしそうにアルミ板を切り出す機械の方へ向かって行った。

 わたしは、そんな代田だいだくんのことを、車椅子で追いかけながら思った。


 わたし、やっぱり代田だいだくんのことが好きなのだと思う。


 でも……これはきっと、わたしの片想いだ。代田だいだくんはとってもやさしいから、お父さんゆずりの、とっても心がやさしい人だから、障害があるわたしに、手を差し伸べてくれているだけなんだ。

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