第10話 息をのむほど可愛い子
六月一日の衣替えの時にはちょっと肌寒いと感じた半袖の制服も、あっという間に暑いと感じるようになった。教室はクーラーを入れっぱなしだ。今日は金曜日、授業が終わったら、わたしは、いつものように三階の空き教室に行く。
教室に出るのはちょっと後だ。わたしは、学校の椅子から、車椅子へと体をすべらしながら、ある男の子の行動をそれとなく視線で追う。
わたしと、
そしていつもは先に空き教室について、机と椅子でコース作りにはげんでいる
あ、でも、ドローンは置いてあるな……二人とも、どこにいったんだろう?
空き教室の先客は、空を見ていた。クーラーが設置されていない空き教室の窓を開けて、窓のさっしに頬杖をついて、ぼんやりと空を見上げていた。
カワイイ。息をのむほど可愛い子だ。
身長は百五十センチくらい。下級生かな? とろんとした二重まぶたで、すっごくかわいい子。耳も見えるくらいのショートの髪型に、ちょっと不釣り合いな長めの前髪が、やわらかそうに風を受けて揺らいでいる。
「あの……」
わたしが声をかけると、その子は、「ビクッ」って肩をふるわせて、こっちを見た。長い前髪が、まるで墨汁をかけられたみたいに顔を半分おおってしまう。せっかく可愛いのに……もったいない。
「この教室、今から使うんだけど、いいかな?」
わたしの声に、その子はうつむいて顔を真っ赤にしている。
「あ、怒っているんじゃないよ。ここ空き教室だし。それに使うと言っても、この教
室全部使うわけじゃないし、そのまま、いてくれていても問題ないから」
そう言うと、その子は、ずっとうつむいたまま固まってしまった。
えーと……どうしよう。
わたしが困っていると、代田くんと
「あ、校長先生、こんにちは」
「こんにちは、
え?
わたしは、 蟻戸くんと呼ばれたその子を見た。スカートをはいている。つまりは、女子の制服を着ている。
「あ、
「
校長先生の説明に、わたしは何となく察してしまった。つまり
わたしは、神様はイジワルだと思った。
息をのむほど可愛い子が
そしてきっと、神様と同じくらいイジワルな子が、
だからきっと、
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