第9話 だって……はずかしいもの
キーンコーンカーンコーン……
グラウンドにチャイムが鳴る。下校時間だ。
校長先生は、十分くらい前に部室を出た。職員会議があるらしい。
その間にわたしは、椅子から車椅子に乗り換える。そしてわたしが車椅子に乗ると、
ちょうど
「じゃ、帰ろうか」
「うん」
「じゃ、また明日」
って、あいさつをする。わたしが
「うん」
って、返事をすると、
だって……はずかしいもの。他の生徒とすれ違ったらはずかしいもの。車椅子を押されているところを知らない人に見られたらはずかしいもの。
「あのふたり、つきあっているの?」
って、へんなウワサがたっちゃうかもしれないもの。そんなことになったら……はずかしい。そ、それに、
わたしは、右手で車椅子にそなえつけられたプロポ……じゃない、コントローラーを前に倒して、車椅子を前進させる。
そして、エレベーターの「下」ボタンを押した。
ドアはすぐに開く。わたしは、「1F」と「閉」ボタンを押した。
チーン
エレベーターが一階についた。わたしは下駄箱をつっきって、そのままグラウンドに出る。シューズは上履きのまま。だってわたしには、外履きはいらないもの。
わたしは、車椅子のコントローラーを前に倒して、無言のままグランドをつっきっていく。
遠くに、校門から出ていく代田くんの姿が見えた。
そしてその先に、わたしの車椅子に気が付いたお母さんが、車を出て後部のバックドアを開けていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます