第6話 王子は姫に翼をさずける
わたしがドローンにドキドキしたと勘違いしている、性格残念塩顔系イケメンの
「うれしいよ。
そう言うと、
「操作モードを変えてみた。
「は?」
ちょっと何言っているかわからない。
わけのわからないことを言った
「VRゴーグル? テレビでみたことある!」
「正しくはヘッドマウントディスプレイ。それに、ヴァーチャルじゃない。見るのはドローンのカメラが映した実際の映像。ま、めんどうだから、VRゴーグルでもいいや」
そう言うと、
すると、目の前に机に座ったわたしがいた。その後ろに
「ゴーグルかけた方が、直感的に操作できるからさ。動かしてみなよ」
そう言いながら、
え? なにこれ⁉︎
わたしは、自分の考えた妄想ではずかしくなった。ヤバイ、ヤバイ! めちゃくちゃはずかしい‼︎
「ほら、はやく、飛んでみて」
おちつけ、おちつけ! 冷静になれ
わたしは、右スティックを前に倒した。あれ? うごかない。そっか、さっき操作を逆にしたって言っていた。わたしは、左スティックを思い切り前にたおした。
フィーん……。
ドローンはふわりと浮かぶと、わたしと王子様じゃない!
「うまい、うまい!」
よし、とりあえず、このままの高さでいよう。この高度なら、わたしに密着したイケメンの
わたしは、そのまま右スティックを外側にたおしつづけた。ドローンはゆっくりと旋回して、今度は廊下が見えてくる。
「窓をくぐってみなよ」
耳元から、
わたしは言われるがまま、上の小さな窓から廊下に出た。そしてすぐに旋回してとなりの窓から教室に戻る。
「すごい!
わたしは言われるがまま、上の小さな窓から夕焼けで染まる外に出た。
飛んでいる。わたしは飛んでいる。わたしは今、ちょうど上空四メートルを飛んでいる。直感でわかる。これは上空四メートルだ。わたしは、今まで一回しか跳べなかった、上空四メートルの世界を飛んでいる。
すごい! すごい! すごい‼︎
わたしは、ドローンを飛ばして、走り幅跳びの砂場に向かった。ゆっくりと地面に近づいて、視線をわたしの背の高さに合わせる。ピッタリ、百六十センチに合わせる。
右手の親指でスティックを思いっきり前に倒すと、わたしは軽やかに助走をする。そして助走ポイントにくると、わたしは、ほんのちょっとだけ左手の親指でスティックを前に倒す。わたしは軽やかに浮いていく。
女子の幅跳びの世界新記録なんて目じゃない。六メートル十六センチなんて目じゃない。わたしは、あっという間に砂場を飛び越える。
すごい! すごい! すごい‼︎
わたしはドキドキした。またこんな快感を味わうことができるなんて! また、自由に身体を動かせる喜びが味わえるなんて!
すごい! すごい! すごい‼︎
わたしはちょうしに乗った。ちょうしにのって、砂場の横の鉄棒をスイスイとたがいちがいにくぐりぬける。
「すごい! スラローム飛行だ」
わたしはもっと調子に乗って、今度は鉄棒のバーのスレスレで、上をまたいだり、下をくぐったりしながらドローンを飛ばしていく。
わたしは、ちょうしに乗った、どんどんちょうしに乗った。すると突然、
「あなたたち、何をやっているの?」
って、おっきな声が聞こえてきた。担任の、
「ひゃぁ!」
わたしはおどろいて、もっとおっきな声を出した。たちまちわたしは落っこちた。ちょうしに乗っていたわたしは、びっくりしてプロポをはなして地面に落っこちていった。正確には、落っこちたのはわたしじゃなくて、ドローンで、わたしはゴーグルでその映像を見ているだけだけど、それでもめちゃくちゃビックリした。
「もう、
「遊びじゃないですよ! ドローン部は校長先生が認めてくれたんだから!」
そう言いながら、
「それに、無理矢理じゃないです! ちゃんと
「ほんとに〜? あやしいなぁ。斑鳩さん、無理しなくていいのよ。こんなわけのわからない遊びに付き合わなくても」
「だから! 遊びじゃないって!」
「先生、これは遊びじゃないです。わたしも、ドローン部に入りたいです」
「マジで! やった、部員一人ゲット! よろしく、
わたしはドキドキしていた。
跳べるんだ。
わたしはまた飛ぶことができるんだ。そのことが、もう本当にうれしかった。ドキドキが止まらなかった。そして、そんなドキドキが止まらないなか、
「
わたしはテーブルに置いてあるスマホをみた。LINEと電話のアイコンの右上に、たくさんの数字がついてあった。
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