第5話 何なんだコイツ
わたしが、ちょうどリハビリを終えた時だった。
ガラガラ
だれだろう? とうとつに、教室のドアが開いた。
「あれ?
入ってきたのは、おちょうしモノの
「ドローン、返してもらえたんだ」
「ああ。めちゃくちゃ反省したから。本当に反省したから」
そういうと、
こいつ、全然反省していない……。
わたしがあきれていると、
「
「は? なんで? イヤだよ。先生に怒られるじゃない」
「怒られたのは、授業中に飛ばしたからだよ。あと、田中先生をおちょくった。それに関しては、ものすごく反省している。校長先生にめちゃくちゃ怒られた」
代田くんは、両手でコントローラーを操作してドローンを飛ばす。ドローンは開けっ放しになっている教室のドアからろうかに飛びだした。そして、換気用に開けっ放しになっている、窓の上にもう一個ある、小さな窓をくぐってもどってきた。あんなこともできるんだ……。
「めちゃくちゃ怒られたけど、でも、オレがドローンを真剣にやっているってのは校長先生に伝わった。アピールできた! ドローン部を作ってもいいって校長先生にオッケーをもらえた! 校長先生が顧問をやってくれるって‼︎」
ドローン部? なにそれ??
「オレは、ドローンレーサーになるんだ! 世界一を目指す!」
ドローンレーサー? 世界一?? なにそれ???
「すごいんだぜ! 大会で優勝すればスポンサーがつく! そして海外に遠征できる。世界大会にも出られる! そのために放課後練習する! 空き教室を使わせてくれるって、 校長先生に約束してもらった!」
ちょっと何言っているかわからない。
「あ、ちょうどいいや、
「は? イヤだよ。そんなわけのわからないクラブ」
なんなの?
「だいじょうぶだって! 左手も親指は動かせるんだろ?」
なんだコイツ? 本当になんなんだコイツ? 「親指は」ってなんだ! わたしがどれだけ努力して左手の親指を動かしているのかわかっているの?
「やらない!」
わたしは、全力でイヤな顔をした。イヤな顔をしてイヤなトーンの声で言ってやった。でも、世の中にはたまーに、空気が読めないヤツっている。
「いいから、いいから」
空気が読めない
足が動かせないわたしは、逃げることもできないから、どうしようもない。
わたしは、みるみるうちにひざの上にコントローラーを乗せられて、両腕をつかまれて、ドローンのコントローラーをにぎらされた。最低だ。
「あ、そっか、左手は支えた方がいいよな」
そう言って、
「じゃ、動かしてみなよ」
「うん……」
わたしは、緊張しているのがバレないように、ドローンのコントローラーを右手の親指で「ちょんと」前にそっと動かした。
ドローンは、ちょっとだけ浮いて、すぐに教壇に着地をする。
「ダメダメ、プロボのスティックをもっと倒さないと!」
プロボ? なにそれ? あ、コントローラーのことかな?
フィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!
「え? ちょ! なにこれ⁉︎」
ドローンは、今度はものすごいスピードで飛んでいって、天井にぶつかって真っ逆さまに落っこちた。
「あ、ご、ごめんなさい。壊れてない?」
わたしがあわてて、
「大丈夫だ。問題ないよ。それにしても斑鳩、お前大雑把すぎるだろ。下手すぎ!」
ワタシはカチンときた。そんなことない、断じてない! 代田くんの教え方が下手なだけだ。第一、操作方法もろくに教えてもらっていない。
わたしは、改めて操作方法を教えてもらった。
「右手の上下で、上昇と下降。左右で横に移動。左手の上下で前進と後退。左右で旋回。とくに、上昇はさっきみたいにいきなり上昇するから力加減が難しいんだ」
わたしは、操作を教えてもらって、三度目のフライトに挑戦した。本当にちょっとの力加減で結構上昇する。かな〜り、微妙なチカラ加減。
「んじゃ、左スティックをたおして前にすすんで」
わたしは、言われるままに左のスティックを前に倒した。ドローンは、ノロノロと前に進んでいく。
「そうそう、そんな感じ。もっと倒せば、もっとスピード出る。やってみなよ」
「それは、ムリ。今で結構イッパイイッパイ」
わたしが答えると、
「
ドローンはゆっくりと前進して、わたしの方へむかってくる。
「左はオレが操作するから、右はよろしく。左右で横移動な」
わたしは、右スティックを内側に倒した。ドローンはこっちに向かいつつも、右側へと軌道をそらせていく。
「あれ? なんで左に行くの? スティック右にたおしたのに」
わたしは思った方向の反対に飛んでいくドローンにあわてて、飛んでいく方向に、つまり、左に首をひねった。すると、目の前に、
わたしはいきなりドアップで現れた塩顔系のイケメンに慌てて正面を向き直すと、右手のスティクを内側にたおした。
ドローンは、今度は右に向かって飛んでいく。
「そうそう、手前の場合は左右は反対。カメラが付いている方が手前。斑鳩、飲み込みいいな!」
「も、もういいかな……なんだか疲れちゃった」
「そうか? じゃ、教壇に着陸させてくれ」
そう言うと、わたしの手をやさしくにぎっている
「スティックを下に入れて……スロットルを下げてそのまま着地をしよう」
と言った。
わたしは言われるがまま、スティックを下げると、ドローンはするすると教壇の上に着陸した。
「どうだった?」
「ドキドキしちゃった……(あ……)」
ヤバい! 心の声がもれちゃった!
「だろ? めちゃドキドキするよな! オレも最初はそうだった!」
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