第19話 特警別邸地下室
桜田門近くにひっそりと立つ古びたレンガ作りの建屋にヤマは入った。
建屋の通称は、特警別邸。
築70年を超える地味な建屋で、大きな地下室がある。昭和の大天災前、米帝との決戦に備え掘られた
公式には防空壕はとうに埋められたことになっている。
つまりは、特警極秘の任に関わるための室。
その地下室で、ヤマは特警
冒頭に目を通すなりヤマは独り言ちる。
「なるほど、安吾が
✧
一通り目を通した後、ヤマは報告書をドサリと机の放り投げた。
そして、天井を仰ぐなりヤマは目を瞑った。報告書は無表情のままに読んだヤマだったが、今は口角があがりどこか楽しそうではある。
ほどなく室の扉が開いた。
ヤマは目を開けることなく言う。
「まぁ、インテリ
「そんなところです」
ひとり室に入った
不惑を越えた
が、ヤマの
キャリア組として
当時、ヤマは、ギヤングや
当時の
小柄で丸顔、黒縁メガネと、なお帝大文科の東洋哲學徒といった風のひ若き
20年の時を経て、
が、二人きりの時には、
一方のヤマはというと、
「安吾の隔秘の任の件を、わたし経由で通達してくれた時から、こんなところだろうと思ってましたが」
そこで、ヤマは目を開けて顎を下げ
「いよいよ
「そういうことになります」
今も当時と変わらない黒縁メガネの
一呼吸の間を置いて、
「ただ、面白い任ですよ。ヤマさんのような適任者がいなかったら私が着任したいほどの」
「課長が
そう返したヤマにも笑みが浮かんでいる。
特警の上層部が、ヤマを危険な任に着かせても良い者と見ていても不思議ではない。
課長となった
そんな安吾が
なんでも最近は青鬼姫だとかいうのに気絶させられたりもしているようだが、安吾は五体満足で任を続けられているよう。
ヤマは笑みを消さないままに問う。
「それで、面白い任とは?」
親子ほど年齢差のある安吾を、願えども得られなかった息子のように思える気持ちがあった。そんな安吾が
「ヤマさんには、金星姫の中に入り、
「ご先祖様というのは、昭和の大天災で天に召された
真顔でそう言った
「金星姫の仲立ちでホトケさんと面会とは、確かに面白そうな任じゃねぇか」
ついにくだけた口調となった。
どうやら金星姫は、前世に飛ばしたり輪廻転生のようなことができるらしい。
独り身の年寄りに向いた任のようだ、とヤマは思った。
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