第17話 観猿の肝丸
東武カンタムマグレブ線 千間台駅。
マグレブの壱等客室に、
二人を個室に案内した客室メイドが、深く一礼をして扉を閉める。
ここから六本木までは30分ほど。
先ほど。
中継員は、月紬は2本前のマグレブで六本木に向かう
しかし、当の
単なる
それとも、何らかの妨害工作があったがため、なのか。
「
「いえいえ、このように高級なお部屋に座らせていただきまして恐縮です」
愛らしい小心者といった風。予定をすっぽかし平気な
「あと、先生はやめてくださいませ。學院でのわたくしは見習いの秘書に過ぎないのですから」
「學院長の秘書殿といえば、将来の出世頭ではありませんか」
なお恐縮する
窓外には、浦和の高級住宅街。緑豊かな光景。
(表面を
そう思うも、話の向かうべき先は見えない。
まずは、私は六本木住まいでして、と、プレイボーイじみた
次いで、
「
さしたる用件がないならばと優しく微笑む。
プレイボーイの軟派にお付き合いくださいと、誘いを込めた笑み。
「はい、お嬢様をお出迎えする予定でして」
(お嬢様? 大山田學院長のお出迎えではなく?)
マグレブは浦和駅に停車。ここからは帝鉄に入る。
叡智學院秘書に、お嬢様宅メイドの複業。
お嬢様の家は代々木上原とのこと。
今川伯爵家。
なるほど、内偵への妨害工作との繋がりもありうるか。
「そうしますと、上原の
「はい、
叡智學院4年、
今川本家の一粒種。
そして、特警厳秘の
「失礼、持病の
実際、
上皇陛下と近親の間柄である今川本家。
華族系財閥随一のコンツェルン、今川財閥は五属共栄の立役者。
今川伯爵は貴族院の有力な中立派議員。
気位が高く独歩を重んじるエルフ属との交渉相手には適任だろう。
今回のキアステン捜査官とのパイプが今川家を介していることもありうる。
二十年ほど前の今川家の未聞の挙。
代々木の共産党活動家と目される東大法科生を本家の入婿に迎えたのだ。
以来、特警参課が今川家を
とはいえ、今の
もう一方で、
今川家がエルフ達からの情報を故意に遮断したというのならば……
さておき、まずは
先ほど
それを、彼女が本心からそれを信じているのならば。
……この丸薬が謎解きをしてくれるはず。
✧
「失礼。この丸薬を飲むと火照りやすくていけません」
観猿の肝丸。魔薬で、服薬すると身体が熱を帯びる。
マグレブが滑らかに減速していく。
窓外には、帝鉄池袋駅界隈の街並み。
その目には、
池袋は、
彼ら彼女らが、今の
水色の髪に、片割れの角。
天鬼属は眠り姫々の片割れ。
観猿の肝丸の魔の力を借りた、
六本木駅までは残り8分。
✧--- 附記 ---✧
水色髪に一本の角。
単に筆者の趣味なのかもしれませんが、何か重大な秘密があるのかもしれません。
ということで、ここから前半のクライマックスに入ります。
ここまでお読みいただき、お気に入りいただききました方。
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かしこ。
孫ソフィア。
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