第15話 チルダン師 対 能面P子。
トテトテ歩く能面P子の後を、
P子が、開始線の前に立つ。
制服姿のままだ。
チルダン師は
「よろしいのですかな?」
「はい、私は至らぬながら……立会人を務めさせていただきます」
そう言いつつも
小柄な彼女が下を向いてしまっては足元しか見えないのではないか。
チルダン師は少し心配そうに
「わかりました」
そして、開始線の前に立つ。
「ソレデハP子さん、お約束どおり、参りましょう」
と言い、一礼する。
P子は一礼を返し、そのまま自然体に立つ。
対するチルダン師。
脇に差すは、大柄な体躯に相応しい長い
P子の小刀も小柄な身体に相応しいとはいえるが……
先ほどの生徒達の試技の模擬刀は当たっても明らかに大丈夫そうだったが。
チルダン師の腰の
動いたのはチルダン師。
縮地でするりと歩み寄りながら刀を抜く。
横一文字の太刀筋がP子の間近に迫る。
その肩に切っ先が届こうと見えた時、P子は後ろに充分な距離を取っていた。
それだけしか分からなかった。
切っ先があと10cmに迫った時、P子が動いたとは
チルダン師のような練達者が抜いた居合の刀は、相手に迫る時には、秒速20mを超える。躱せるのは1秒で20mを動ける存在のみ。
陸上生物最速のチーターは100mを5秒を以内に走るけれども、それはトップスピードが速いから。ならば……
いや、俺の
チルダン師は左に蟹歩きし、P子と再び三歩の間合いで向き合う。
抜いた刀のまま、得意の上段に構えた。
P子は右の半身のまま静観。能面の下も涼しい顔か。
師が動く。素直な袈裟斬りがP子に迫る。
すっと躱した。
その躱しに吸い付くように、滑らかに師の逆胴が還る。
またも躱した。
速さを重視した逆胴だった。
体躯の動きが大きさを見てか、P子は体を入れ替える。
その向こう、大柄な師は、再び上段にて左右に小さく動く。
二拍の後、縮地の歩みで小さく面打ち。
P子は右後ろに躱す。
対して匠は体を落とし気味に追って捌き、追い突きに入る。
チルダン師の刀が落ちた。
P子が師の小手を打ったのだった。
師匠を追い突きを上回る速度での返しの動き。
完全に間合いに潜ったP子はそのままトンと師の胴を小刀で突く。
接触判定版に赤が灯った。
作用反作用の法則でヒラリと舞い上がっていた制服のスカートも元に戻った。
「マイリマシタ、だね」
チルダン師は苦笑い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます