第11話 學院での内偵の任は
同級生たちは、彼の周りに集まり評をする。
「うん、締めの出し物にいいんじゃない。私にも、二刀三斬はなかなかできなそう」。
そう言う
(彼には、対人恐怖の気があるのかも)
母子家庭の
學費を免除される代わりに、學院の行事に協力する義務があるらしい。
苦學生として、なかなか大変なのだろう。
来週の修了式での演舞も、その義務の一つ。
幼馴染として
「えぇやん、えぇやん。スパーっと竹が割れて。気持ちイィんって感じで」
何やら腰をくねらせつつ声を発していたのは、
彼は、隣接校の越谷実業の生徒。
えぇやんは、
「二刀の剣筋と竹筒の落下の仕方との関係が、計算外に思われてとても興味深かったよ」
ハカセ君的な語りをしたのは、その名も
彼も母子家庭で、
學業成績は大変優秀だ。
「計算できなそうなところ、アートな感じよね」
おっとりとした声で続けたのは、
絵描き志望のお嬢様。
後ろでは、
彼女達は、たいてい一緒にいる模様。
✧
皆の話を聞きつつも
「さておき、随分のんびりな内偵の任となっているよな」
赴任後に行った内偵といえば、學内で
月初に勘解由小路邸を訪れた際には、随分と気合が入ったものだ。
帝國の、いや、世界の脅威を取り除くためにできることをやらなければ。
そう思っていた。何しろ、最短で2年で大きな厄災が起こる見通しなのだ。
けれども。
俺は内偵任務者の中の下っ端にすぎない。
ヤマさんの下での捜査のイロハ修行でも教わったではないか。
待つ時は、現場でひたすらに待つものだ、と。
それに、本当に世界規模、地球規模の危機が起こるものならば、上層部にも確たる策はないはず。
今は、まずは与えられた内偵の任を着実にこなすことだ。
得られた情報を総合して判断することは上の仕事だ。
それに、2年後はさておき、その次の金星との会合周期にあたる10年後の厄災では、學院生達が大きな役割を果たしてくれるのかもしれないのだから。
✧
この後は、六本木に戻り、内偵の任を続ける。
今日は
美容施術には男女問わない需要がある。
かく言う
いかにも華族家のお坊ちゃんといった風の容貌を作るため、とのことことだった。
そして、今日の六本木では、學院長が何やら仕掛けをするとのことだった。
學院長は「キュートクロス」のオーナーでもあった。
母子家庭の生活を少しでも楽にしてあげようと
いや、あの學院長女史は、どうも奇天烈な人のようだから、
半月ほどの學院内偵で得た知識から、
ふと、今の自身はまるで探偵だな、と思えてしまう。
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