第4話 女饗師 雪乃上夏目
廊下では、友永はの芝居じみた仕草を控えた。
ホッとしつつ、安吾は、背をスッと伸ばし
向かった先は、記録映像室。
室では再び友永が教師役に立つ。
「さて、
二人きりとなるや、なお恋人芝居を続けるようだ。
「先ほど、
なるほど、
ついに
熊本での
友永の細い指が、安吾の胸元をトントンと叩く。
「
雪乃上夏目。確かに彼女には謎めいた美しさがある。
……そう思った安吾は、誰のことだ、とギョッとする。
「
腕を組んだ
……その顔を見つつ、安吾はようやくに思い至る。
「
「ご明察。わたしは洗脳も逆洗脳もこなせる
なるほど。
この恋人芝居の意味を、安吾はようやくに理解できた。
✧
立派な庭を持つ大邸宅の写真が映し出される。
続いて、入り口に高級車がずらりと並ぶ写真。
「これらは、佐藤さんが
佐藤は陰陽庁の陰陽師。安吾の3期上の先輩だ。
和服姿の若い女性が映し出される。奥ゆかしい美人だ。
「こちらは
隠形の陰陽?
思わず、安吾は友永の方を見やる。
「まぁ、
続いて長身で長い黒髪のキリリとした女性の写真。
長大な白い包みを手にしている。
「彼女は御令嬢のボディガードのルサンカさん」
言いしれない迫力がある。
「この後、この公爵家で公警の大捕物が始まるのだけれど、所轄違いということで、そちらはまたの機会にね」
✧
「千葉の一女の制服よ」
一女こと、千葉市の第一高等女學校。トップクラスの名門高女だ。
しばし写真を見つめた安吾は尋ねる。
「もしかして、先ほどの
「そう、
写真が夏目の顔の大写しに切り替わる。少し耳が尖っている。
「彼女に、
次の写真は、
「真ん中がシスポリのキアステン魔薬捜査官、ハイエルフ。周りのエルフが護衛の魔法師団ね」
通称インターポールS、国際特別刑事警察機構。通称もなお長いので、英語名Specialized International Criminal Police Organizationの略称SICPOをもじってシスポリと呼ばれる。条約により、帝國内で魔薬犯捜査に携わる権限を持つ。
魔薬は永らく欧州を中心に出回ってきた。魔薬犯捜査の経験が乏しい帝國警察は、当面、シスポリの助力を必要としている。
「夏目さんはキアステン捜査官の姪にあたっていて。クオーターエルフなのだけれども、実際には隔世遺伝で、
✧
続く
加えて、陰陽師に馴染みの少ないエルフの魔導使いと目される。
周囲には、条約による不逮捕特権を持つエルフの魔法師団。
さらには軍が魔人の域と見做すボディーガードのルサンカ。
その夏目を、金星姫の
金星姫の
事実、夏目自身がルサンカを伴い乗り越んだ公爵家の捕物も、シスポリから公警へと打診があった
夏目を通じ流れる
勘ぐれば、宣託の恩恵が特警ではなく公警にもたらされるようなことを事前に知りたいということか。
✧
「夏目さんは、4月から女子医専に飛び級で進むのだけれど、同時に文武省の文化魔導饗師になるらしいの。準公務員。おそらくはキアステン捜査官の差し金ね」
「夏目さんのような可愛い子が外国公館に
安吾は納得の頷きを返す。
「一女卒の
確かに、高めのヒールにスーツ姿は女學校の先生といった風ではあるが。
「夏目さんかその取り巻きに、
そう言うと、
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