白い部屋

 そんな馬鹿な……。ヒロシは頭を抱えた。

「それどころかだよ。目撃者もいるんだ。目の前で家族が消えた、友人が消えたってね」

 ヘッドホンで動画を見ていた息子が突然目の前から消えた。そういう類の通報が全国の警察に入ったらしい。

「そんな馬鹿なこと」

「そう思うよな? 警察もそう思った。動画が削除される前にある県警で捜査員が君の動画を視聴したんだ。どうなったと思う?」

「消えたんですか?」

 ははは、と警察官は力なく笑った。

捜査本部ごと・・・・・・失踪した」

 ヒロシは吐き気が込み上げてきた。

「一体何なんだね。あの動画は?」

 泣きそうな顔で捜査員が尋ねた。

「ただのホワイトノイズですよ。チューナー音とレコード音を重ねて、白い画面を付けただけです!」

 震えながらヒロシは答えた。

「白いらしいな。画面だけ見たり、途中だけ見た人間は生き残っているんだ。そいつらの証言によると『白い部屋』の映像だったそうだ」

「白い部屋……」

「どこまでも広がっているんだと。横幅も奥行きも限りなく。そこへ引き込まれそうになるんだと……」

「白い部屋……」

どこかにつながっている・・・・・・・・・・・。そう感じたそうだ」

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