取り調べ
「警察です。開けてください」
次の朝、ヒロシは警察の任意聴取を受けていた。
「あくまでも参考としての事情聴取です。あなたが何をしたという話ではないんですが……」
警察官の歯切れは悪かった。どうにも話しにくそうだ。
「何を聞きたいんでしょうか?」
困惑したヒロシが聞き返した。
「……ニュースを見ていないんですね?」
「起きたばかりで見ていません」
「人がね。大勢失踪しているんです」
「は?」
どういうことかわからなかった。失踪事件?
「どうやらね。世界中で1億人以上いなくなっているらしいんです」
「はあ? どういうことですか、それ?」
1億人って……。日本の人口に近いじゃないか。
「君の動画を見ていたらしいんですよ。いなくなる前に」
「僕の動画?」
「昨夜動画を投稿しましたよね? 『ザ・ホワイトノイズ』というタイトルの」
「しましたけど……」
警察官は頭を掻きむしった。
「失踪現場、たいてい室内なんですが、現場を調べると君の動画を見た形跡があるんだ。どの現場でも」
「いや、でも、1億人って……」
はあーと、警察官は大きなため息をついた。
「ジョスティン・ディーヴァーって知ってますか?」
「はい……。海外の大物アーティストですよね」
「そうらしいね。そのジョスティンが君の動画を宣伝したらしいんだよ、SNSで」
さらに激しく頭を搔く。
「あのジョスティンが、ですか?」
「そうなんだよ。それを見た人がまた広めてね。一晩で1億回再生だそうだ」
「噓でしょ?」
警官はじろりとヒロシを睨みつけた。
「俺が嘘をついて何になる? とにかく
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