『They couldn’t move on』解説①

 まずは、拙作『They couldn’t move on』をお読みいただいた読者の皆々様に、深くお礼申し上げたい。ツイッターのフォロワーさんの中には、執筆にあたって為になるアドバイスもいただけて、感謝に堪えない。


 こういう場では敬体で話すべきかもしれないが、本編解説のページなので、常体で飾らず、簡潔に説明したい所存だ。


 本作を書いた目的が何だったか、順序立てて説明できる気はしないため、思いつく限りで挙げると、

 一、冒頭と結びに同じことを述べる論文ごっこ

 二、書き手ユーザーとしての連載完結経験

 三、ノリと勢いで押し切った浪漫仕立てのアンチミステリ


 上記のことに挑戦したい思いがあって、拙作を書くに至った。アンチミステリは『じんしん』も同様だから、梅木のキャパシティのなさが理由にあるのだろうけれども。


 一については、本当にごっこと呼ぶしかない。論文のストーリー性が創作にも通用するらしいことを小耳に挟んで、大学生としては関心を持たざるを得ないメカニズムに感じられたのだ。


 この作品は、冒頭と結びの一文が一致しているが、論文などに見られる序論と結論を揃えた書き方をするのならば、ひと段落まとめて、語り手「私」が同じようにものを考え、過程が持論の証明に対して妥当なものだったと説明しなければならない。


 しかし、一致しているのは一文のみ。


 死への衝動と、記憶を消す魔術の受け入れとでは、喪失するものの大きさが異なり、序論で示したことを結論で反復する理屈の模倣にはならない。

 加えて、儀式が終わったところで、語り手「私」は死なない。マジで、ごっこ以外の何物でもないのだ。


 次に、二に関してだが、これはもう、作者ページを見れば明らかで、私はサイトに投稿した作品数が少なく、完結回数は〇だ。小説家志望としてこのままではまずい、という危機感が両手を突き動かした。


 拙作『じんしん』をお読みの方は既にお気付きかもしれないが、『They couldn’t move on』は、あちらに比べると大分ライトだ。文体から純文学のようにカテゴライズされそうだが、私としてはこれはもうライトノベルである。……ちょっと言い過ぎた。ただ、通俗向き中の通俗向きと言っても過言ではないくらいの軽量級である。


 梅木仁蜂、入門編、ナンチャッテ。門しかないぜ、書割かきわりかな?


 そして、三について。怒られるのでアンチミステリという言い方を撤回したくなったが、要するに、梅木は、「推理小説でありながら、手持ちの情報だけでは謎を解けず、あるいは知ってさえいれば解けるような、頭を使ったとも言えない愚作」を書いたのだと、言いたかったのだ。


 唯一謎といえるのは、登場人物のその時々の感情や行動の意味だが、それこそ主観的で、答えがあったところで納得できるものでもないので、黙っておく。


 浪漫の意味は、浪漫小説から来ている。時代遅れも甚だしい表現だが、メッセージ性のために、設定や人物の行動の自然さなど、ディティールを犠牲にしているのである。世界中の浪漫小説に謝れ。


 では、梅木がこの粗雑な世界を道具にして、伝えたかったこととは? それこそ、ストーリー展開で雄弁に語ってきたところだと思うので、わざわざここで明示はしない。読者の皆様には、作者の解説よりも、ご自身がこの作品で感じたことを大事にしてほしい。


 そんな感じで、大雑把な目的の説明は終わった。

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