第21話 妄想初夜。いいではないか。よいではないか! ACT5

「ねぇ直登くぅん。気が付いた?」


んっ? な、なんだこの下半身に感じる今までにない、温かさと、この気持ちよさは。

「だいじょぅぅぶ……だよ。私も初めてなんだけど、それなりの知識はあるから。……なんて言うこと言わせちゃうの?」


はぁ? いったい秋穂は何をしているんだ?

その横で、ジッとにらみつけるようにその様子を見つめている二つの目があるのに気が付く。

そして意識が戻るとはっきりと聞こえてくる。何かものすごく想像に掻き立てられるてしまう、いや、これは、この感触はその音と共に、俺の下半身は……。


これだけ元気だと問題ないね。


「そうなのお母さん?」

「うん、そうだよこういうもんなんだから。優奈は初めて見るんだよね」

「は、初めても何も。そんなことをするなんて知らなかったし」

「うんうん、私もこんなことするの直登君が初めてなんだから本当だよ」

「お、お父さんとは、……。あのぉ、その、なかったの?」


秋穂は「うん」を迷いもせずにうなずく。

「そ、そうなんだ」と優奈はつぶやいた。


その会話が何かとてもなまめかしく聞こえてくるのは、俺の欲望がそうさせているからだろうか。

このワンルームに女二人と男が一人。誰に邪魔されることのない空間で、こんなことをされたら、俺はもう理性? ああ、そう言えば理性と言う言葉はなんだっけ?

一緒に暮す。この二人と一緒に暮してもいい。と、俺はさっき風呂の中で、秋穂にそう言ったその記憶はある。


つまり、その了解の元。秋穂達がこの俺の承諾に賛同したということは、つまりはその、関係をもってもいいといいうことの承諾でもあるということを意味? ああ、でもこれって俺の勝手な思い込みだと思うけど、実際、そう言うところまで突っ込んだ意識と言うか思惑はなかったんだが、こうして何やら、俺の体をもてあそんでくれているということは、その域までの了解をこの二人は覚悟していたということであろう。


ならば、俺はその二人の意を素直に受け取り、3人で、遠慮のない家族以上の関係で、楽しく暮らしていった方が、お互いのためになる。

そうだ、きっとそうだ。秋穂も、そう思っているに違いない。そして優奈も、秋穂のこの行動に賛同して、自ら、受け入れようとしているに違いない。


ああああああああ! 

ようやく俺も男としての役割の行為を、これからするんだ。


この冷たい雨が降りしきる中。俺たちはお互いじっとりと、体を濡らして……。

雨? 冷たいぞ!


「直登君! 直登君。しっかりして」

頭上から冷水シャワーが降り注ぐ。


しかも風呂の給水蛇口からも冷水がジャバジャバと出ていた。

おかげで、風呂のお湯はすでに水とかしていて、しかも頭上からは冷たい真水のシャワーが否応なしに降り注がれている。


「うわぁっ!! つめてぇ!!」

「ああ、ようやく気が付いた。良かったぁ」


その声に反応するかのようにあたりを見回すと、優奈が両手にしっかりとシャワーをもって俺の頭の上からじゃばーっと水をかけ続け、秋穂が俺の両肩に手を添えていた。

「俺どうしたんだ?」

「もうっ! 直登君のぼせて気を失っていたんだよ。一時、どうしようかと大変だったんだから」


「のぼせた?」

「うん、ほら、話していたら、いきなり返事なくなってさ、悪いとは思ったんだけど、ドア開けたら直登君ぐったりしてんだもん、ほんと驚いちゃった」

で、優奈がシャワーで俺の頭から水をかけて、風呂のお湯の温度下げるために蛇口から水だけ出してと。うううううううううっ、さ、さみぃ。


棒然としながら優奈はいまだに俺の頭上から、真水のシャワーをかけ続けている。

「あのぉ優奈さん。もういいみたいだから、そのシャワー止めてくれませんか?」

思わず丁寧語で話している自分がいるのことにいささか、困惑している。まだ頭の中は混乱状態であることは言うまでもない。


「あっ! ご、ごめんなさい」慌てながら、シャワーのバルブを閉めた。

ようやくすべての今の状況が把握できて来た。

優奈は俺に真水のシャワーをかけ、秋穂は俺の意識を戻そうと、体を揺さぶっていたみたいだ。さすがに女二人でも、この俺の体を浴槽から出すことは不可能だと判断したからだろう。そして、もう真水化した浴槽の中にはバスタオルが俺のあの部分に掛けられていた。


さすがに、じかに直視は出来ないということなんだろうか。それとも、優奈への配慮? あっ待て、秋穂確かまだ処女なんて言っていたけど、本当かどうかはこの真意を確かめる気にもなれないんだが、一応彼奴も照れ隠しと言う意味での、このバスタオルであったのかもしれない。

しかし今が夏になるところの季節でよかった。もうすでにこれ水風呂状態。真冬だったら俺、凍死していたかもしれない。


そして気が付いた。俺の肩に手を添える秋穂の体もずぶぬれであることに。

白のシャツ。そしてうっすらと透け見えるピンク色のブラ。しかもこんなにも至近距離で、秋穂の胸が俺の目を覆いつくしている。


「あ、ありがとう。もう大丈夫だよ」慌てて俺は立ち上がった。

「えっ!?」

驚いた表情を浮かべた秋穂。

「どうしたの?」

「ううん……何でもない」顔を赤らめ俯く秋穂。

何なんだ一体? 

自分の意思とは裏腹に反応しまくる俺の下半身君。こんなにもつめてぇ水の中というのにも関わらず、しかもだ、水を含んだこのバスタオルを見事に支えているではないか。


おおおお! 我ながら、この威力はすごい……のか?


「わ、私達出るね」慌てふためいた感じに秋穂と優奈は風呂場から出ていった。

しかしまぁなんだ。ここまで羞恥をさらけ出してしまうと、もう怖いものは何もない。と、言う感覚に陥りそうになるのをこらえた。

まだ理性というものは残っている。はずだから……。


脱衣所のカゴの中には着替えが用意されていた。もう一度温かいシャワーでも浴びようかと思ったが、いい加減もう体はふやけている。冷え切った体が外気温で温まるのを待った方がよさそうな気がしている。

ああ、どんな顔してあの二人にこれから会えばいいんだ。それに夜はまだ長いぞ。

これからまた俺たち3人は同じ部屋で夜を過ごす。

本当に俺、やっていけるんだろうかものすごく不安であることは言うまでもない。


「くしゅん!」

くしゃみと共に鼻水が出てくる。

やべぇ、早く着よう。風邪引いちまいそうだ。


急いで下着を履き、用意してくれていたスエットを着て脱衣所のドアを開た時。

「わぁっ! ちょっと待って!」と、秋穂の声がした。

「ごめぇ――ん、今私も着替えてるからもう少し待ってくれる?」

「あ、ご、ごめん」そう言って、ぱたんとまたドアを閉めた。


ドアを開けた時、ほんのわずかと言うか、ちらっとしか見ていなかった。いや目に入らなかったと訂正しておこう。秋穂の全裸が……うしろ姿であったのが幸いしていたかもしれない。見えた。本当は見てしまった。

しかしなんだ、ほんの一瞬のことであっても、意外と良く観察できているもんだ。

きゅっとしまったウエスト。腰回りに安産型と言うんだろうか。プリンとしたお尻が際立つ体。同い年の女の体と言うのはああいう感じなのかと言うのを、勝手にこの頭は想像妄想しまくっている。


こういう時に、反応してもそれは男の性というものであるから、そこは致し方ないと思うのだが、俺の意思とは反対にこういう状況なのに、さっきのような力強さを見せつけることのない下半身君。

おい、お前、それってどういうことを意味してるんだ。やっぱり俺って2次元の女しか愛せねぇていうことを証明してんのか。

壁、ドア一枚向こうには女が二人、それも一人は全裸だ。……そして現役の女子高生。

普通なら、これは非常にきわどい状況でもあると言えるんだろうけど、俺って……俺って。


「なぁ直登よ。お前、本当はこの二人のこと一夜にして好いてしまっておるんじゃなかろうな。まぁ一目ぼれという言葉があるが、欲情だけの恋はむなしさしか残らんぞ。まぁでもよい。良いのじゃ。おなごを好きいなるきっかけなど、さまざまあるからのぉ。それに”あれ”の愛称はどうかも重要なんじゃぞ。良く覚えておけ」


ああ、なんかうっせいぞ爺さん。

爺さんの天の声が今はうっとおしい。

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