第13話 俺って意外とモテていたのか? 修羅場が始まるぞ! ACT2
にっこりとほほ笑む秋穂さん。
うっ! もしかして私完全におされている? 事実権力はこっちが上なんだと思うんだけど、なんか私今、凄く弱腰。どうしてこんな気持ちになちゃうの?
でも秋穂さん、ものすごく強気。ではないか、それでも威圧感は半端なく感じるんだけど。
これが子を持つ親の力と言うものか?
でもさ、実際この人は子供を産んではいないみたい。あくまでも憶測だけど産んではいないよね。
だって、スタイルかなりよさそうだもん。そりゃ、私だって負けてはいないと思うよ。
仮にも私はプロのコスプレヤー。体の曲線美は商品の一部なんだから気は使うわよ。
……でも、なんか綺麗そう。この人もしかして脱ぐと本当にきれいな体しているんじゃないかなぁ。
なんか見てみたくなってきた。
で、今まで気が付かなかったけど、もしかして秋穂さん。今、ノーブラ?
じぃ――っと彼女の胸を見つめる。その視線を感じたか?
「あのぉ―、さっきから私の胸見ていません?」
「ええっと、そのぉ……」突っ込まれて返事に困る。
「うふふふふ」と不気味な笑みを浮かべ。「見たいんですか?」と問う。
みたいと言うかそりゃ興味持っちゃったんだから、見たいというか、脱がしたいというかねぇ。
ほかの女性の体にはものすごく興味はあるのは、事実なんだけど。
「見ますぅ?」悪戯小娘のようにニタ笑いをしながら彼女は言う。
「じつはですねぇ―、さっきからずっと感じていたんですよぉ。大家さんのし・せ・ん」
「な、何を! 私そんなに見ていないよ!!」
「気づいたのは私の後ろ。ベランダに干してある洗濯物見つけた時かしら。そうですよね? 私そう言うの結構鋭いんですねぇ」
ギクッとした。この人意外とできる? いや、気の抜けない人かもしれない。こう言う人を敵に回すとものすごく厄介である。業界の中にもいるんだよねぇ。業界と言ってもまぁコスプレヤーの業界なんて広いようでものすごく狭いんだな。だからスキャンダルなんかは特に要注意しなきゃいけないんだよね。
会社から……もとい、マネージャさんからは釘刺されているんだもん。
「見たいだなんて。そんなことありません。確かに干してある洗濯物は気になりましたけど」
「でしょうね。そこまで気になっているていうことはですねぇー」
彼女のニターとした顔がさらにニターとしていく。
ゾクッと背筋が凍るような感覚がして来た。
「もしかしてあなた。直登君の事好きなんでしょう」
うっ!
直球で来たか。
「ねぇねぇ。そうでしょ。大家さんとは言え、そこまで直登君のこと気にしてんのバレバレなんだけど」
「そ、そんなことありません……よ。ただ私は店子さんの事を面倒見ないといけないという思いで……いるだけなんです……けど」
あああん、顔がものすごく熱いよぉ!
私のバカバカバカぁ!! 恥ずかしいよぉ~!! 穴があったら入りたいぃ……。
「もしかして私と直登君がこのまま、一緒に暮したら、いけない方向に向いちゃうんじゃないかって思っていません?」
な、無いとは言えないよね。あははは、攻められている。私秋穂さんに攻められている。
もじもじしている私をじっと見つめ。
「ふーん、まあいいわ。とにかくあたしは直登君と付き合うからね!」
えっ!? 今なんて? 私聞き間違えたかな?
ニターとした秋穂さんの顔がニタラァァとした。そのニタラァァって言う顔がどんな顔かは言葉に言い表せないよ。こっちはもうひきつっているんだから。
「面白いですねぇ」
「な、なにがですか?」
「大家さんの顔」
「へっ? 私の顔? 面白いって?」
あははは、どうせ私の顔なんて。すっぴんに近い顔なんですからね。メイクで造っていない顔なんて、こんなもんですよ。そうですよ、どうせ不細工なんですよ……私は。
「あれ、怒っちゃいました?」
「お、怒ってなんていません!」
「うっはははははは」
「な、なによぉ! し、失礼じゃないですか! あんまりですよ!」
「ご、ごめんなさい」
秋穂さんはおなかに手を当て笑いこけている。
「ほんと、ごめんなさいでも、……だって面白いんだもん。ああ、でもこんなに笑ったのって久振りだなぁ」
涙まで浮かべて笑っている。そりゃ、あなたは美人かもしれませんよ。美人と言うか、どちらかと言うと可愛いって言う方があっているんだけど。こう言う顔付の子。直登君好きそうだよねぇ。それに引き替え、私は……? あれ、私の顔って、どんな顔してんだっけ?
自分の顔を自分で描けない。
キャラを演じるために自分を捨てた。
自分の顔さえも思い出せないこの私。なんだかとても情けない。それに引き替え、秋穂さんはちゃんと自分と言うものを持っていそうだ。
やっぱり直登君にはこういう人の方がいいのかな。
……私なんて……。
今度は目頭が熱い。瞼が潤んできているのがわかる。
「ほんとごめんなさい。で、でもおかしくて、やっぱ耐えられない」
「いいんですよもう、私は不細工ですからね。秋穂さんのように美人じゃないですからね」
「あら、そんなことないんじゃないんですか? 大家さんとっても美人ですよ」
「へっ!」ぴくんと耳のあたりが動いた。
「それにしても大家さんって表情豊かですよねぇ。見ていておかしくて」
「はぁ?」
「こんなに顔立ちのいい人が、ころころとあんなにも表情変えると面白くてつい」
「表情?」
「そう表情」
はぁ、表情って。顔創るのは得意だけど。いろんなキャラコスやってきたからなぁ。で、私そんなにも表情表に出していたの? 直登君といる時だってそんなに表情豊かって言う訳じゃないんだけど、ま、一緒にいる時はいつもゲームしていて画面ばかり見ているから、そんなことまで気にもしていなかったけど。もしかして今まで、その顔の変化を直登君はずっと見ていたの?
嘘だよね。……ああああ! 恥ずかしい。
私今、顔。真っ赤になっているはず。だってこんなにも顔が熱いんだもん。
そんな私を見つめる秋穂さん。ああ、私はこの人には勝てないかも。そんな気がしてならなくなっている自分が今ここにいる。
直登談。
で、この二人。この後何がどうしてこうなったかは分からないが、意気投合しているんだなこれが……。
ほんと生身の女ってよくわかんねぇな。
秋穂が俺と付き合う?
う――ん、それってどうだろう? 彼奴の本心はまったく俺には向いていねぇじゃねぇのか?
いや、俺を男だとは思っていねぇのかもしれねぇ。
多分そうだ。きっとそうだ。
でもよぉ、あの二人のおっぱい。あれだけはなんかとても魅力的なんだけど!
パフパフしたいのは俺の願望!!
「えへへ」
何とかうまくいっちゃったぁ!
これで大家さん公認でここに暫く住めるぞ!
でも本当に面白い人だったなぁ。大家さん。それに直登君のこと好きなの隠そうとしていてバレバレなんだけど!
なんか可愛い……。あれ? 何今の。
胸のあたりの奥深くがチクリと来る感じは……。
いったいなんだろう……。
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