第8話 さてこれからどうする? ACT 4
「ん?どうしたの? 私のおっぱい見られてるみたいだけど」
そう言って尚ねぇさんは自分のおっぱいを両手で持ち上げる。
「いや、あの……その……ごめんなさい!」
俺の顔は一気に熱くなる。
俺はすぐに顔を背ける。
くそっ。何だこれ!? 恥ずかしすぎるぞ。こんなにも女性を意識してしまったのは初めてかもしれない。いや初めてではない。正直なところ。
今までの女性との経験ではこんな気持ちになったことなど一度もなかった。そこまで行くとすらなかったというのは本当の童貞男なのだ。
でも、仕方ないじゃないか。だって相手は尚ねぇさんだぜ。あんなにも美人な人が隣にいるだけでもドキドキ。
これが。この姿が本当の尚ねぇさんの本来の姿であるんだろ。
「あら、顔真っ赤にしちゃって可愛いわね~。あぁー」
そう言いながら彼女は俺の隣に来る。
そして、俺の手を取りそのまま自分の方へと引き寄せた。
すると、俺の右手には何か柔らかいものが触れている感触があった。
この感触は何だろうと思い、ゆっくりと手の方を見ると、そこには尚ねぇさんのおっぱいがあるではないか。
えぇぇぇぇぇぇ!! ちょっ、ちょっと待て! これは一体どういうことなんだ!?
まさかとは思うけど……、もしかして彼女着けていないのか? 柔らかすぎる? それにノースリーブのシャツの胸の先端が突起し始めているではないか! もう一度彼女の方を見てみるとやはりノーブラだった。
「ふふっ。本当に直登君はかわいいわね」
そう言うと彼女はさらに強く俺のことを抱きしめてきた。
だから、もう無理だってば! これ以上されたら頭がどうにかなりそうだ。
それにしても今日の尚ねぇさんいつもより積極的すぎないか? というよりこんな感じに密接に尚ねぇさんと触れ合うことなんて思ってもいなかった。まぁ別に嫌というわけではないんだけど。むしろ嬉しいし、役得だと思うんだけれど。ただあまりにも突然すぎて心の準備が出来ていなかった。
ああああ! 本当にやわらかい。こうして、まともに女の人に抱かれることなんて、も、もちろん初めてのこと。中学の時にプールで抱きついて感じた女の子のむにゅポチャッとした体のやわらかさを思い出させる。
しかもだ、今回は彼女の体からいい香りが漂ってくる。甘くて花のようないい香り。
それからしばらく俺たちはそのままの状態でいた。そして、数分後ようやく解放される。
「はぁ……はぁ……」
俺は息を整えるように深呼吸をする。
意識はすでに花園の楽園の中を浮遊していた。
「ねぇ、直登くぅん。決めちゃいなよぉ。いいでしょ。リフォーム仕立てで綺麗だし、駅まで徒歩10分の立地なんだよ。それにさぁ。わ・た・し・と同じ敷地に住めるんだよ。直登君も私の事嫌いじゃないでしょ」
「そ、そりゃ、ま、き、嫌いじゃないですけど」むしろ好みの方かもしれない。
「それにさぁ、同じ趣味持ってるんだからさ、何かと色々とねぇ、出来るでしょ」
「で、出来るって……何がですか?」
「だからさぁ――――色々よ」
「――――そ、そうですねぇ」と、答える顔は緩みっぱなしで下心を露出しまくっている俺に。
「はい、それじゃご契約しましょ」
俺の手を引いて、母屋の方に向かおうとしたが。
「ちょっと、待ってください。尚ねぇさんせめて中、見せて下さいよ」
「ふぅ―、そうよね。ごめんね。部屋の中もちゃんと見たほうがいいわよね」
ようやく尚ねぇさんも落ち着いたのか? いつもの尚ねぇさんに戻った感じがした。
カチャッと部屋のカギを開け、ドアを開く。
「さぁ、どうぞ。ご存分にご見学ください」
言われるままに中に入ってみると、まさに、新築その者のような感じを漂わせる綺麗さだ。
「これでも築30年は立っている世の。ここまでリフォームかけるのに結構かかってるんだから。でも綺麗でいいでしょ」
「確かに、中は築30年なんて言うのはまったく感じさせない。
風呂トイレはユニット。陽の光を反射するかのように、フローリングは綺麗に輝いている。それに外に通じる大きな窓。その先にはおよそ1.5畳ほどのベランダ付き。
そしてやっぱり外で見た通り、天井には2畳くらいのロフトがある。このロフトの存在はかなり大きい。それになんかロフトって秘密基地ぽくて俺は好きだ。あこがれの空間と言ってもいい。
「ほんといいですねぇ」
「そうでしょ。そうでしょ。だからさぁ契約しちゃおうよ」
すぐに契約に結び付けようとする尚ねぇさん。管理人兼オーナーさんと言う事らしいから、分かると言えばそうなんだが、肝心の部屋代料金も何も聞いていない。こっちだって予算と言うものがある。どんなによくたって。……まぁ大抵いい物件と言うのは値段もいい物件だというのは当たり前のこと。
しかも郊外ならまだ安いところもあるんだろうけど、ここは都心。23区内だ。と言いうことは家賃も結構な額にあるはずだ。ましてこんなにきれいにリフォームまでされているんだ。高いんだろうな。
―――もちろん――――だよな。
ちょっと遠慮気味に。
「あのぉ―、ここやっぱり家賃それなりにお高いんですよね」
「…………」尚ねぇさんの口が開かない。
ああああ、ヤッパリ。相当高いんだ。月10万以上もするんじゃないのかなぁ。
「で、お家賃っていくらなんですか?」
もじもじしながら尚ねぇさんは。
「あのね、リフォームする前はさ、ほんとボロボロでかなり古いアパートていうかさ、お爺さん始めたことなんだけどなんて言うのかなぁ。長屋って言う感じのイメージが濃かったんだよねぇ。だからさ、住んでいる人たちもさ。いい年の人が多くてさ。確かにいい人たちばかりだったんだけど。さすがに手直していうか、いろいろと修繕しないと部屋貸し業も出来ないて、お役所さんから通達が来ちゃって。それでリフォームして耐久度も上げて……何とかまたこうして再開できるようになったんだけど。やっぱさ、前と同じくらいの家賃て言う訳にはいかなくてさ。……それで今まで住んでいた人たちはほかに引っ越しちゃって。……リフォームしてから、もう1か月位になるんだけどいまだにまだ店子さん決まっていないんだよねぇ。このままだと不動さん屋さんからもなんか契約更新できないかもって言われちゃうし。実はちょっとまいっているところなんだよね」
うぅーーん。やっぱり家賃相当高く設定してるんだろうな。だからこないんじゃないのか?
「ほんと家賃っていくらなんですか?」
尚ねぇさんはぼっそりと「8万円」
ん――――。この立地で8万かぁ。でも妥当と言えば、そうかもしれないなぁ。今いる俺んところだってあんなにぼろでも月5万は取られているんだから。
それにさ、新規入居となれば敷金礼金前家賃という具合で3か月分はかかるよなぁ。まぁ予算がないという訳じゃないんだけど。ただなぁ。本音はもう少し他も見てみたいなぁていう気がしているのが本音。もしかしたらもう少しいいところがあるかもしれないし。という淡い期待も持ち備えているし。こうして、部屋探しをするって言うのも、なんかちょっとと楽しそうだから、期待していたんだけど。
少し俺が悩んでいるようなそぶりをすると。
「あ、あのね。直登君知らない人じゃないし……な、直登君なら前家賃1か月分だけで、即入居してもらってもいいんだけど」
んっ? 前家賃1か月分だけ。
ピクリと気持ちが動く。
「だからさ、初期費用かかんなくて済むようにするからさ。どうかな?」
うーーん。月8万かぁ。会社から補助は5万。そうなれば自己負担は3万かぁ。やっていけないことはねぇけどなぁ。
煮え切らない素振りをしていると尚ねぇさんが。
「ねぇ直登くぅん。さっき私のおっぱい思いっきり触ったでしょ」
じっとりとした目つきでこっちをにらみつけた。
「ええっと。そ、それは何と言うかその」
「うふふ。また触りたくない? 私のおっぱい」
ああああああ! あのふくよかでやわらかいおっぱい。あの感触がまた俺の手に宿る。
「ねぇ、契約書。受け取るわよねぇ」
「――――はい」思わず返事をしてしまった。
誘惑に負けたと言われてもいい。
だがあれ以来。俺は尚ねぇさんのおっぱいに、触れることは一切なかったのだ。
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