第33話 可愛い相棒と裏活動(3)
「久しぶりなんじゃない。ケイシ」
茶髪にパーマがかけられ、
命島の中心部、セル社の本部に足を踏み入れていた。今回は行政窓口ではなく、直接オフィスに通されている。真見は落ち着きなく綺麗なオフィスを見渡していた。
(もしかしたらお父さんの浮気相手が通り過ぎているかもしれない!)
「お久しぶりです、エマさん。『スカラベ』の
(流石万野さん。大人だな……)
「じゃあ、担当する子が来たってことね」
エマが満面の笑みを浮かべる。
「ええ。こちらの
「カンノ……。もしかしてマサフミの子?」
「はい……」
エマが興奮気味に真見の顔を
「私はエマ・テイラー。宜しくね。それよりあなたのダッド、凄いわよ。これから驚くような世界が見られるから楽しみにしてて。私達、バイオミメティクス部隊も負けてられないわ」
そう言って机の上から取り上げたのは片手に乗る小さな小型のロボットだった。真見の両手の上に乗せられるとスカラベは顔を上げる。その様子が飼い主を確認する小動物のように見えて真見は思わず
「その子は
側にあったタブレット片手にエマが説明を続ける。3人はタブレットから映し出される映像を見ながら聞く耳を立てた。
「複眼カメラと言っても実際の生物のように1万もカメラを取り付けることはできないからせいぜい数百ぐらいかしらね。そのお陰で広範囲の生物に反応して自動で追うことができるわ。紫外線を感知することもできるの」
「こんなに小さいのに?カメラがそんなにたくさん?」
真見は可愛らしいスカラベの黒い瞳を覗く。スカラベは顔を傾げて見せた。
「随分可愛らしいロボットですね」
「詳しい取り扱い方と契約書はメールしておくわ。自然が残されたエリアに
「はいっ!」
真見は嬉しそうに大きく頷いた。
「あの。父は普段、どの階にいるんでしょう」
椅子に腰かけたエマがコーヒーカップを机に置いて答えた。
「デスクは特に決まってないけど……。会って帰る?」
「だっ……大丈夫です!」
真見が慌てて手を振った。内心ではガッツポーズを決める。
(これでセル社に自然に出入りできるようになった!浮気調査も進むはず)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます