第34話 可愛い相棒と裏活動(4)
「クロも可愛い奴だけど。この『スカラベ』も可愛いねー」
「うん」
真見もすっかりスカラベの事を気に入っていた。
「名前は?どうするの?」
「名前?考えてなかった……」
真見は困ったように手の中を見下ろす。小さな前足が真見の手に触れた。本物の昆虫のようにささくれだった足をしている。
「サンなんてどうかな?」
隣から現れた
「ど……どうしてサンなんですか?」
真見はスカラベに視線を落としながら問いかけた。佳史は明るい調子で言葉を続ける。
「スカラベは古代エジプトで太陽神の象徴とされたんだ。太陽は英語で「sun」だろう?だからサン」
「サン……。良いかもしれないです!」
感動して左を向いた時、思いのほか佳史の顔が近いことに驚く。佳史は
「でしょう!」
(どうしよう……近い)
真見が固まっているところに瑠璃の冷たい声が飛ぶ。
「万野先輩……。距離」
「おっとごめん。つい、スカラベに夢中になって」
佳史が離れていって真見は安堵する。
「それじゃあ、さっきの話、聞かせてもらおうかな」
お道化た表情から真剣な表情に戻った佳史に真見は息を呑む。真見の側を離れた佳史は良の肩に寄りかかった。その様子を見て瑠璃が更に不機嫌になる。
(万野さんは基本的に距離が近い人なんだな……)
「学校に戻るのも面倒だし。あそこのベンチにでも座ろうか」
命島のあちこちに島民が休憩できるようなベンチが見られた。その周辺には必ず花壇や植木が整えられ美しい景観を生み出している。
「この島は観光客を
そう言いながら佳史は真見達に紙パックの飲み物を渡す。真見には紅茶、瑠璃はエナジードリンク、良はオレンジジュースだった。
「わー!ありがとう
一人はしゃぐ良に佳史は柔らかい笑みを浮かべる。真見と瑠璃も続けて礼を述べた。
(……万野さん、気遣いが凄いな。きっと好みを考えて買ってくれたんだ)
佳史はカフェオレを飲みながら口を開く。
「それじゃあ、船から落ちた時のこと。教えてもらえるかな?」
真見は良と顔を見合わせ、頷き合った。
「はい。私、船から落ちる前後に違和感があって……」
真見は駐在所の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます