第15話 スーパーアイランド命島(1)
「学校への道は『セル・ディビジョン』が教えてくれるだろう」
「うん。分かった……行ってきます」
「……いってらっしゃい」
1年ぶりに聞く真文のいってらっしゃいはどこかこそばゆい。ぎこちなく手を振り返す真文を可笑しく思いながら真見は左手首を見下ろす。
小さな液晶画面の付いた腕時計のような機器。軽く触れて起動させると鳥肌が立つ。
『おはようございます。ご用件は何でしょうか』
(喋った!)
ワイヤレスイヤフォンを通して穏やかな女性の機械音が聞こえる。真見は内心興奮しながらも、問われるままに答えた。
「えっと……。
『命島学校への道ですね。地面に映しだされる矢印に向かって進んでください』
「地面……?」
真見が首を傾げる。言われたとおりに地面を見下ろすと赤い矢印が真っすぐに伸びているのに気が付いた。
「え?何、これ……」
さっきまで何もなかったはずの地面に矢印がうかびあがっているのだ。何度か目を
(もしかして……これのせい?)
真見は手首に取り付けた『セル・ディビジョン』に触れる。
戸惑いながらも真見は矢印に従って道を進んだ。面白いことに矢印は真見が進むたびに現れる。10分ぐらい歩いたところで学校が視界に入った。
『目的地に到着しました!ナビゲーションを終了します』
「これが学校?」
その建物は巨大な繭のようだった。『命島小学校 中学校 高等学校』と書かれた看板が無ければとても学校に見えない。木を基調としたドームのような施設を前に真見は立ち尽くす。建物の手前には広々とした校庭が広がっている。
『
突然自分の名を呼ばれ、真見は弾かれたように声のする方へ目を向ける。そこにはセル社の本部にいた案内ロボットがいた。ディスプレイに映し出された大きな瞳が真見を捉えている。
真見はすぐに顔認証をされたのだと気が付いた。
「はい……」
『命島のガイダンスを受け付けております。どうぞお入りください』
「失礼します……」
真見は頭をぺこりと下げると学校の敷地内に足を踏み入れた。
すぐに校舎の中から一人の女性が出てくるのが見えた。大きく手を振っているようだ。
「こんにちは!神野真見さんでいいのかな?」
20代半ばぐらいだろうか。若い女性教師が真見を笑顔で迎えた。熱烈な歓迎に真見は戸惑った。失礼のないようにワイヤレスイヤフォンを取り外し、ポケットにつっこむ。
「はい……。東京から来ました。神野真見です。宜しくお願いします」
「いい子で安心しちゃった。私は命島学校の教員、
そう言って葛西は満面の笑みを浮かべた。
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