第6話 イルカと少年(6)
『ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております』
島タクシーのドアが閉まると誰も乗せていない車がもと来た道を戻って行く。
「安心しな!
「……え?」
真見が
「顔認証でお金が自動的に引き落とされるんだ。だからこの島の人は現金を持ってない。キャッシュレス社会なんだ。しかも全部顔認証」
真見の隣で
「すごい……!本当に異世界に来たみたい」
「異世界なんて大袈裟な!俺も最初は嫌だったんだけどよ、慣れちまうもんよ!手ぶらで生活できて
診療所へ顔認証センサーで入室する。消毒液の香りが
真見は全身CT検査を終えると丸椅子に腰掛けながら有志の診察を受けた。
「骨は折れてない。肺や脳にも異常はなさそうだな……。ただ、今日は安静にしていなさい。湿布は貼り直しておいたから。早めに救助されたのが
「はい……」
真見は右足を見下ろす。
「迎えが来るまでここで待っていると良い。待合室は誰もいないはずだから使って構わないぞ」
「ありがとうございます。すみません、ドライヤーまでお借りして……」
「そんなこと気にすんな。風邪ひくなよ!」
真見は
(あれ……?
朝方の太陽のように穏やかな良が
「あのさ……。何か言いにくそうだったから、さっきは黙ってたんだけど」
真見を見るなりソファ席から立ち上がる。ここで良が案外背の高い少年であることを思い知る。
「船から落ちたのは……本当に事故だったの?」
「え……?」
(誰かに落とされたような感覚はあったけど……確証はないし……。勘違いだったら迷惑がかかるし。
真見は握りこぶしをつくると、弱々しく微笑む。頼りない、小さな声で答えた。
「私の不注意だったんだ。イヤフォンが落ちちゃって……」
良の大きな目がじっと真見の言動を捉えていた。真見は自分の嘘が見透かされていそうで、思わず口を閉じる。
「神野さんが落ちた後、人影を見たような気がするんだ。すぐに船の一室に消えちゃったし、神野さんを助けるのに夢中だったからよく見えなかったけど……」
「え……?」
真見の背中に冷たい汗が流れる。顔を青ざめさせる真見をよそに真見の細腕を
真見は良の行動に驚いて肩を震わせた。
「
良の大きな瞳に吸い込まれそうだった。
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