第5話 仕事の説明

フィファナさんに連れてこられたのは町外れにある小さな民家だった。

 周りにはちょっとした草原みたいのが広がっていて風が気持ち良い。

 他の建物もないからなんか別世界に来たみたいだわ。

 

 地球からこの世界に来たこともそうだけど、そういうことじゃなくて……なんていうんだろ。

 

 なんか、現実的な景色じゃなくてアニメとかで見れそうな景色だからかな?

 まあ、とりあえずめっちゃいい景色なんすよ。

 ほんと。


 「それじゃ、どうぞお入りください。ちょっと散らかってるかもしれませんけど。」

 

 あ、そういえば話聞きに来たんだった。

 それで、ここってフィファナさんの家なの?

 まさかの一軒家!

 

 見た目的には20代前半くらいなのに。

 いくら立地とか家の大きさとかが小さいからって一軒家はすごくない? 

 

 あ、でも借り家なのかも。

 てか、むしろそっちのほうが可能性高いか。

 一瞬フィファナさんに尊敬の念を感じた私の気持ちを返してほしいわ。

 ……いや、別に馬鹿にしてたわけではないけども。

 

 ドアを開けて中に入ってみるとすごいきれいに片付いた玄関がお出迎えしてきた。

 

 何が散らかってるだよ!

 めちゃくちゃキレイじゃん!

 

 でも、靴を置く段差なくね?

 …………あ、確か外国って家の中でも土足なんだっけ?

 

 家の中に土足で入るってなかなか慣れないな。

 

 「それじゃ、こっちです。」

 

 フィファナさんはそう言うと私へ手招きをした。

 そのままついていくと、リビングのような場所へ出た。

 

 やっぱりきれいに片付いていた。

 

 前世の私の部屋とか学校から配られてきたプリントやら資料集やらを片付けることもなくそのままおいてたからすごい散らかってたよ?

 これで散らかってるとか言ってたら私の部屋はどうなるんですか!

 嫌味ですか!

 

  ―――うん。

 被害妄想膨らましすぎるの良くない良くない。 

 フィファナさんがそんなこと思ってるわけないない。

 

 死んでから思想がマイナス方向に向かってっちゃってる。

 いや、でも前よりは明るくなってるのか?

 

 別に今、大変だとは思ってるけど死にたいとは思ってないし。

 今・は・。


 新しい環境への期待がまだあるからね。

 なんか変わってくれるんじゃ?っていう。

 

 ―――まあ、そんなことは起こらないと思うけど。

 


 ……あ、こういうところだ。

 ほんとに気をつけとこ。 

  

 卑屈になりすぎるのほんとに良くないからさ?

卑屈。ダメ、ゼッタイ。


 「それじゃ、仕事の内容について話したいんですけど……」

 

 そんな事を考えていたら先にフィファナさんの方から話しかけてきた。

 

 「あ、わかりました。」

 「それじゃ。簡単に仕事の内容を話していきます。って言っても主な仕事は私がいないときの赤ちゃんの世話だけなんですけどね。」

 

 そう言うとフィファナさんは奥にあった部屋に入っていった。

 しばらくすると戻ってきてその手には赤ちゃんが抱きかかえられていた。 

  

 「この子、サルアっていうんですけど―――」


 おぉ……かわいい。 

 それで、フィファナさんの顔も明らかに母親の顔してるもん。

 優しいふんわりした顔してる。


 「私が仕事に行っている間この子を見守ったり、変なことをしたときは注意してくれたりしてあげてください。あと、出来れば私がこの子の世話してる時とかにも家事をお願いしたいです。ご飯とかは作っておくので昼とかにはそれを食べさせてあげてください。」

 

 それだけ……ねぇ。

 まあ、最初に話聞いたときから子守がメインなんだろうなとは思ってたけどそれだけって。もっと掃除とかご飯作ったりさせられるのかと思ってた。

 

 「ほんとにそれだけでいいんですか?」

 「それだけ……?」

 「あの、ご飯作って〜とか、掃除して〜とかそういうことは……」


 それだけいうとフィファナさんは納得した様子だった。

 

 「あぁ、そういうことですか。いや、別に大丈夫ですよ?」

 「いや……でも、やっぱプラスして衣食住まで保証してくださるとおっしゃられていたので流石に子供の世話を見るだけじゃ対等じゃないかなって……」


それに私子守りは慣・れ・て・る・し・。


 「あ〜それじゃあ、お願いしてもいいですか?私としても家事やってもらえた方がありがたいですし。」

 

 うん。

 されっぱなしじゃ私としてもここに居づらいからね。

 

 それで、この仕事やるかどうかだけど……まあ、やるでしょ。

 ここまで良い条件な仕事もないだろうし。

 

 それに騙されてる感じもないし。

 …………いや、これ騙されてるフラグじゃん。

 

 ま、まあ!

 フラグは発覚した時点でフラグじゃないから!

 

 「それで……この仕事……やって下さいますか?」

 「はい!是非お願いします。」

 「ふふっ。良かったです。それじゃあ……ギルドカード今持っていますか?」


 ギルドカード?

 なんそれ?


 「すいません。私ギルドカード?持ってなくて……」

 「あ、そうなんですか。それじゃあ、一緒にギルドで作りに行きますか?」

 

 え、いいの?

 ほんと?


 「いいんですか?」

 「はい。もちろん。1人じゃ作るの時間かかると思いますし私は早く働きに来てほしいので利害は一致してるんですよ?」


 いやー?

 流石にそんな理由じゃないと思うよ?

 なんか心做しか目泳いでる感じするもん。

 

 流石に嘘つくの下手すぎだろ。

 いや、フィファナさんが嘘うまいとも思えないけど。

 まあ、フィファナさんが優しいってことはわかった。


 「それじゃ、とりあえずこの家の部屋の位置とかキッチンの使い方とか教えるのでそれ終わったらギルドに行きましょ―――あ、もう夕方ですね。」

 

 窓から外の様子を見てみると真っ赤な夕焼けが見えてきた。

 あ〜これはもう今日は行けないか。

  

 「……それじゃ、とりあえずミナさんの部屋を紹介するので今日は泊まっていって下さい。それで明日朝イチでギルドに行きましょうか。」

 

 あ、まだ働いてないのに泊めてくれるんだ。

 ほんと天使フィファナだわ。


 ……ん?

なんか目眩がして……


 「はい……わかりまし……た。」


それだけ言うと私は床に倒れた。


 「ミナさん!?大丈夫ですか?

 「……あ、そういえば……ご飯食べてないんだった……」

 

 何日食べてないっけ?

 あ、半日か。

じゃあ、どっちかって言ったら疲れが溜まったのか。

 

 「……とりあえずご飯にしましょうか。」

 「はい……お願い……します。」

 

 初対面の日にこんな醜態を晒してしまうなんて……はぁ。

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死ぬために生きる?いや、生きるために死にます! ゆめうめいろ @yumeumeiro

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