第4話 ギルド来たぞー
―――さて、結構歩いてきたけどみんな一向にどこかに止まったりする気配がない。
みんなよくわからない通路を登ったりしててここが軽く迷路に思えてきた。
これホントに人工物か?
それにしてもおなかすいた~。
もう何日食べてないのやら……いや、半日くらいか。
情報量多すぎてもう数日はたった気がしてた。
えっと。
今まで起きたことをまとめると―――
自殺して転移して、誰もいないヨーロッパっぽいところ行って、もっかい自殺して転移して、それで今の世界?にきて、人混みにもまれながら歩いてると。
こんだけ濃い内容だったらそれくらい経ってると思っちゃってもしょうがないか。
それにしても、いざ並べてみるとほんと非現実的とか言う言葉が全然機能しないな。
そもそもなんで一回誰もいないところに転移したのか。
どうせこの世界に来るのであれば最初からここに転移すればよかったわけだし。
それになんで私は死んでないのか。
これはほんとにわからん。
なんでこんなふうになっているのかは神のみぞ知る……か。
―――こんな状況になってるのに精神状況が普通な私ってもしや結構やばい?
まあ、2回死ぬ決断をしただけでも世間一般的に見たらやばい人なんだろうけど。
あいあむいっぱんじんでーす!ってことにしとこう。
そんなかんじで他愛もない(?)ことを考えていた頃。
―――お?なんか、ざわざわしてきた?
だんだんと……何かが変わってきた。
なんだろ。
べつに緊迫感とかを感じたわけではないしどっちかっていうかむしろみんな楽しそうな感じもする。
……いや、楽しいってなんだよ。
絶対仕事探すときの心境じゃないだろ。
仕事探すときに楽しいって感じる猛者はいないでしょ。
この世界だったら常識とかが変わってる可能性もあるけども。
まあ、常識とかは地球とあんま変わんないと思うし、なんでこんな状態になってるのかはいよいよわかんない。
しばらくすると大きい部屋に出てきた。
んーっと?
おぉ!
すると、凄い勢いで周りの人たちが走り出した。
「仕事やクエストを見る時は押さず走らず見てくださーい。」
係のお姉さんがなんか言ってるけど誰も聞く耳持ってない。
えー何事?
みんなが走っていった方向を見ると2つの看板が立っていた。
なんかさ……看板の文字が日本語で書かれてるんですが……
ここがどう言う場所なのかいよいよわかんなくなってきた。
で、看板に書かれている内容は―――1つ目が「クエスト掲示板」
これは冒険者みたい人たち用だと思う。
多分みんなこっちの仕事を奪い合いに走ってたんだろうな。
2つ目が「仕事紹介掲示板」
あのさ、「クエスト掲示板」っていうの見たときから思っててたんだけどさ名前が安直すぎやしませんかね?
いやね?
わかるよ?
そりゃクエストが貼られてる掲示板だったり仕事を紹介してたりする掲示板だもん。
間違っては無い。
でもさ?
いくらなんでもそのまま付けるのは……
…………うん!
きっと深い意味があるんでしょう!
じゃなきゃ流石にこんなダサすぎる名前つけないもん。
流石に……ね?
話脱線したけど、ここでは仕事紹介してくれることには変わりないんだし素直に喜ぶべきことだよね。
結構歩き回ってたわけだし。
それじゃ早速どんな仕事があるのかのぞいてみますか。
そして私は大量に人が密集してるところに足を踏み入れた。
―――ふーむ?
よーし。
大まかに生活できそうで私でもできる仕事を見てみた。
私でも出来そうな皿洗いとか雑誌の配達とか簡単な仕事も多くあった。
ただ!
ただ、給料が安い!
安すぎるんだよ。
なんだよ一日皿洗いして5000モルアって。
モルアにどれくらいの価値があるのか知らないけどさ?
横にあった学園の教員のしごとは普通に地球と同じくらいだったから円とモルアは金銭的にはほとんど同じだと思う。
それを知った状態でもう一度見てみましょう。
一日皿洗いして5000モルアです!
一日の働くっていう定義がわからないから12時間勤務だとすると相当なボッタクリですよ?
地球でも一時間働いたら最低でも850円くらいはもらえてるし。
12時間勤務したら地球だったら10200円くらいは貰えないと法に触れるレベルなんですがそれは。
地球でも労働基準法とかなかったらこんな感じになってたかもしんないけど。
それにしても一日皿洗いして5000モルアって半分以下じゃん。
でも、私ができそうな仕事なんてそんな仕事くらいしかないし……
掛け持ちとかしたとしても結構生活きつそう。
一応日本っていう教育大国の教育を受けてきたっていう実績はあるけどそれを他の人に教えたり、数学の法則とかを広めたりするのは私には難しいしね。
さーて、どうしよう。
このままだったら速攻労基署行きみたいな労働環境で働かなきゃになるんでしょ?
まあ、たかが子供の身でそう言うことを言うのもおこがましいけど。
うーん、どうしよう―――
困り果てていたときだった。
「あの~お一人ですか?」
「ふぇ!?」
うっわびっくりした~。
どうやら女の人が私に話しかけて来たみたいだった。
「えーっと……私に用でしょうか?」
「まあ、はい。そうですね。」
あれ?
ドキドキしない……なんで?
……考えてても仕方ないか。
それで用?
さて、なんだろ。
身体売れとか言わないよね?
怖いよ?
この人美人だし。
美人な人が仕事の勧誘してるのは怖いイメージしかないからね!
ドラマな見過ぎかもしてないけど!
それにしてもピンクっぽい色の髪の毛に整った顔立ち。
さらにスタイルも完璧。
何だこの人。
眩しい!
私がそんなことを考えていると私へ話しかけてきた理由を説明してくれた。
「えーっとですね?今、家政婦というか、家事やってくれる人が必要で……あなたにやってもらいたいな〜って思って話しかけたんですけど……そういうことに興味ないですか?」
家政婦?
家政婦かー……いや、無理だよ?
こちとらここ最近は完全なヒッキーだよ?
ていうか、そういうのって見ず知らずの人に頼むもんじゃないでしょ。
「えっとすいません。私そういうのはちょっと……」
「いや、短い期間からでもいいですから!ほんとにお願いします!給料は弾ませますから!」
え、えー?
そんな急に……
「他の人でもいいんじゃないですかね……私よりそういうの得意な人とかいっぱいいらっしゃると思うんですけど……」
「えっと、うちに小さい子供がいて男の人とかはむりだし、できるだけ若い女の人に入ってもらいたくて……で、あなたが一番見た感じまともそうだったから……」
あーそれは確かに働ける人は少なそうだけど……
周りを見回してみたら確かに若い女の人はあまりいない。
そもそも欲しい働き手の母数が少ないから私にそのチャンスが回ってきたってこと?
でもなー……
「いや、でも……」
「じゃあ、じゃあ!衣食住を提供しますから!ほんとにお願い!」
……なんか申し訳なくなってきたわ。
弱いものイジメしてる気分になってきた。
すごい必死なのに私が承諾しないから悪役になった気分になるわ。
まあでも、衣食住提供してくれるのはありがたい。
そもそも衣食住を確保するために仕事しようと思ってたわけだし。
でも、やっぱ知らない人について行くのは……まあ、話だけなら。
「……とりあえず話は聞かせてもらいたいです。ちょうど私衣食住を確保するために仕事しようとしてたので。」
そう言うと女の人は安心した顔をして笑ってくれた。
「うん。ありがとう!」
私の直感が言ってる。
この人は絶対悪い人じゃないって。
※あくまで直感です。根拠はありません。
「それじゃついてきて。とりあえずここから出て話しましょうか。」
「はい……わかりました。」
「そういえば、名前はなんていうんですか?」
「名前?」
そういえば、名前くらいわかっとかなきゃか。
「そうです。私はフィファナ。あなたは?」
「えっと……日ノ島皆です。」
「ヒノシマミナ?聞いたことない名前ですね。」
あ、こういう反応って異世界みたいなところにきたら実際にされるもんなんだ。
「まあ……ちょっと遠い場所から来たんですよ。だからここのことについてもいろいろ教えて下さい。」
日本のことを遠い場所っていうの結構便利だな。
結構使い所多そう。
「はい!任せてください!それにしても、へー遠い場所ですか……どんな場所だったんですか?」
「えーっと―――」
これが私とフィファナとの出会いだった。
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