君の隣に
水咲雪子
青い栞の痛み
ショウタという人間は恋愛に前向きな性格だ。いや、だったというべきか。今はまだ奇異の目で見られがちな同性愛者であった彼は、臆するどころか「これが俺だ」と
言わんばかりに恋を謳歌していた。中学二年の頃には彼氏も出来ていて、自分は愛されていると、そう思っていた。
事件は中学三年の秋。ショウタは自分より頭の良かった彼氏と同じ高校へ進学するべく、勉学に励んでいた。それこそ大好きなデートをする暇すら惜しんで勉強していた。
そんなある日のことだ。ショウタは授業で出たばかりの課題を終わらせるために図書室へ向かっていた。途中で忘れ物をしたことに気づき、教室へ戻ると中から彼氏の声が聞こえてくる。
「ショウタ?ああ、付き合ってることにしてる。別に興味ねぇけど、ちょーっと優しくお願いしたら飯は奢ってくれるし、デートだっていやぁアソビ代も全部出してくれる。便利だぜ〜あのバカは」
耳を疑った。
聞き間違いであってほしかった。でも、ハッキリと聞こえてしまった。
その日を境に、前向きなショウタは姿を消した。
彼を愛していた。愛されていると……思っていた。
残りの中学生生活は地獄そのものだった。日に日に学校に居る時間は短くなっていき、彼の顔を見ただけで、彼の気配を感じるだけで体調が悪化する。
ショウタは何よりも騙され、利用されていたことを知ってもなお「嫌い」の一言が出てこなかった自分自身に嫌悪していた。
幸い元は優等生。それまで第一志望としていた高校と比べれば多少見劣りするものの、問題なく進学が可能なだけの成績と内申点があった。最も、彼氏に騙されていたことが分かった時点でそこに進学する理由は無いのだが……。
と、ここまでがこの物語の主人公。山岸翔太のトラウマである。
これは、恋人に裏切られたショウタが進学した高校で、今後どんな学生生活を歩むのかを描く物語だ。
君の隣に 水咲雪子 @Yukimura_Haruto
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