第17話 グリモアのスキルを試しました
「グリモア……どうか鑑定でありますように!!」
朝になりグリモアを使おうとしていた僕は、効果が似ているだけの違うスキルである可能性を危惧し、何の効果も無いだろうがせめて祈っておこうと両手を合わせていた。
グリモアを開く……するとミルドから聞いた通りの内容が綴られていた。
期待感が高まり心臓の鼓動が早くなっていた。
そして最後のページを開く……。
そこに書いてあったのは……。
「観察……外れだったか……」
僕の期待を返して欲しい。これに金貨4枚も使ったかと思うと無性に腹が立つな。
確か観察は鑑定の下位スキルだったはずだ。肩透かしを食らった感は否めないが損はしていないと信じよう。
《スキル〈観察〉を獲得しました》
とりあえず試してみるか……。
◆◇◆◇◆◇◆
「ここら辺でいいか」
着いた場所はクロガネと出会った湿地帯、ここには強いモンスターが多いらしい。
僕の匂いを嗅ぎつけたのか、犬の魔獣が姿を現した。
こいつキラー・ドッグじゃないだろうな……。
いや……違うな。理由は分からないが、こいつは違う魔獣だと断言出来る。
恐らくこれが観察の効果なのだろう。
これなら観察が鑑定に繋がるのも頷ける。
頷けるのだが―――
《スキルを進化させるには同じスキルを入手し、統合させる必要があります》
俺今質問してないんだけど……。
ってか同じスキル手に入れないと出来ねぇのかよ!!
「おっと」
犬の足元が揺らぎ、足元が崩れた。
土を操る犬……。
「アース・ドッグってとこかな」
属性狼シリーズに続いて属性犬シリーズかよ。
犬の方が弱そうだけどそうでも無いっぽいな。
一応属性狼シリーズは全種倒したことあるし……。
違うところは犬の方が魔法スキルを使う頻度が高い事かな。
あぁなるほど。
「こいつら魔力量が多いんだ……」
『流石は主……この短時間で見破るとは』
「クロガネ……そんな所に居たのか。ってかよく折れねぇなそこ!!」
クロガネがいたのは木の枝の上。僕の身長より大きい狼が乗っても折れない枝って……それ使えばかなり強い武器になるんじゃないか?
後で切断して持って帰ろう。
『それにしても主よ……さっきから攻撃をしてませんが何をしておられるので?』
「観察スキルを手に入れたからな、回避行動とかに最適なスキルだし練習をね」
『なるほど、観察スキルというのは視覚外でもはっきされるのですか?』
「うん。普段やってる相手の行動予測の精度が補正されてるからな……これくらいなら片目でも避けられるよ」
こればホントのことだ。元ニートとはいえスキルの補正のおかげで身体能力はそこそこ上がってる上、もともと運動神経はそこまで悪く無かった。ちなみに引きこもった理由は人間関係でトラブったからだ。
魔法攻撃に徹してほかの行動をしない犬の攻撃くらいなら今のように会話しながらでも避けるのは難しくない。
「そろそろやめるか」
戦闘を開始して2分……既に犬の攻撃は精度も威力も落ちていた。
魔力切れだ。
帰るとしよう。
『倒さないのですか?』
「今日はスキルを試したかっただけでクエストじゃないしな」
『では私が頂きます』
クロガネはそう言うと力尽きたように倒れている犬を頭から噛み付いた。
「お前命を奪うような真似はしないんじゃ無かったのか?」
『それは人間相手だけでございます故』
魔獣は良いのかよ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます