第12話 モンスターをテイムしました
よし!!行こう。
朝になり準備(携帯食と武器だけだが)を終わらせ、作家の街フィークへ足を運ぼうとしていた。
地図は用意しないのかと言われそうだが、僕には最初のガチャで手に入れた【マップ】がある。
初めは大した能力は無かったが、魔石によってスキルを強化できることを知り直ぐに強化したから鮮明なものなら半径1キロ、そうでなければ半径3キロまで分かる。
うん!!便利だね!
北の門に着くと、いつもクエストに行く時に使用している東門とは違い門番が居た。なんでも東の門付近で生息する魔獣は初心者用とも言われるほど弱く、門番など居なくても問題ないそうだ。
「そんなことが分かってるならキラー・ドッグの天敵とかも知ってそうなものなのにな」
ギルドに居る人に僕の考えを伝えたところ、キラー・ドッグに天敵なんて聞いたことない上に冒険者が討伐クエストを受けた記録も無いらしい。
やっぱり調べる他無いわけだ。
まぁ他の方法があるならほかの街に行く必要なんてないんだけど……。
グシャリ
足が妙に重い……くそ!!これが湿地か!
土が湿っているから足を取られる。雨が上がって直ぐに体育の授業で走らされてるみたいだ。
実際は歩いているのだが、足を押さえつけられるかのような感覚が、どんどん体力を削いでいく。
少し進むと、大きな木の下にある僅かな湿り気の少ない場所に黒い獣が現れた。
いや、正確に言えば「寝ていた」というのが相応しいだろうか。その獣は今まで見たものより遥に大きな狼だった……毛の色を見るにシャドウ・ウルフの上位種だろう。
「ダーク・ウルフ……ってところか?」
『何の用だ小僧』
……は?狼が……喋った?
『答えよ!』
どうやら本当にこの声は狼のものらしい。
「えっと……この先にあるっていう町まで行きたくて」
『ふむ……貴様冒険者か』
狼の視線が僕の全身を巡る。まるで値踏みされているような気分だ。
事実これは一種の値踏みだったのだろう。数秒経って、狼は謎の笑みを浮かべた。
『小僧、燻製肉は持っておるか?』
燻製肉……携帯食として作られる、水分を抜き塩と数種のスパイスで味付けされた食べ物。通常の干し肉より多少値は張るものの、味は数段良い。
ってそんなことはどーでもいい。
「……持ってる」
『よかろう。その肉をよこせ!そうすれば町まで連れて行ってやろう』
「良いのか?」
狼は無言で頷いた。
断る理由など無いのではないだろうか?携帯食が無くなるのは寂しいが、渡せばほぼノーリスクで街にたどり着く。
よし!!渡そう。
「分かった。でも後から襲わないでくれよ」
そして僕がカバンから取り出した燻製肉を、この狼は美味しそうに食べていた。
「そういえばあんたに名前はあるのか?」
『私はネームドモンスターでは無い・・・念話スキルを手に入れ話せるようになっただけの名無しよ』
ネームドモンスター・・・この単語はゲームをやっていれば嫌でも見る。この世界ではラノベやゲームのように名前持ちはモンスターの中でも格が上がるらしい。
名前を付けてやろうと思ったがこの手のシステムで名前をつけるには、対象のモンスターが進化しうるだけの魔力を持っている必要がある。
今の僕の魔力がどれくらいあるのかは調べてないから知らないが、まだそんなに増えてないだろう。魔力を使うスキルもあまり多くないし、平均値あるかどうかも不安だ。
……アナウンスで調べられないかな?
―――〈アナウンス〉僕の魔力量は?―――
《1500です》
―――平均は?―――
《レベル1の人間の平均値は100です》
レベルなんてあるのか・・・まぁこれは予想通りだな。技がスキル制なら実力はレベル制になっているのは当然だ。
平均より15倍も魔力があるのには驚きだな。
これだけあれば名前も付けられそうだけど。
―――ダーク・ウルフに名前をつけた場合魔力はどれくらい減る?―――
《およそ1300前後です》
なら大丈夫か。
「なぁ……名前僕が付けてやろうか?」
『何?』
「だから……名前を付けてやるって言ったんだよ」
『お前が私にそこまでする理由はなんだ?』
「そこまでって……名前くらい大したことないだろ?ほんのお礼だよ」
『大したことないわけないのだがな……まぁよい。付けてもらえるのならありがたくもらうとしよう』
「うん……それじゃあんたは今から〔黒鉄〕だ」
『クロガネ……』
「あぁ!よろしくクロガネ」
そう言った瞬間、ダーク・ウルフの体が光った気がした。そして、一回り大きくなり毛が金属のような漆黒の輝きを放っている。
『正直……期待してはいなかったのだがな、まさか本当にネームドモンスターにされるとは……礼を言わせてもらおう……そういえば貴様の名は聞いてなかったな、名乗るがいい』
「ユウキ……舞城祐希だ。」
『ユウキ様、私クロガネは貴方様に忠誠を捧げます。』
忠誠って大袈裟な・・・でも
「よろしく頼むよ!クロガネ」
『は!!』
こうして……無事にフィークにたどり着いたのだった。
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