第2話 怪物
「……」
ある国の城の中。
そこで王様は、広い場所で大きなイスに座りただ静かに待つ。
その室内の真ん中では、召喚師と魔術師が力を合わせて、大きめの丸い紋章を描き魔法を唱える。
秘書、大臣、執事、メイド、貴族騎士、兵士、付き添いに志願して来て合格した冒険者……皆、成功を願って静かに待つ。
「「ハァッ!!」」
召喚師と魔術師は、力強く声を出す。すると、大きめの紋章がピカッ!!と光り出して皆、眩しくて目を瞑る。
そして目を開けるとそこには、男女五人の若者が居た。
「成功……成功です!」
「やった!」
魔術師の女性が、召喚師の男性が喜んだ。
周りも喜びの声が上がった。
ただ……王様は喜びもせずにただ静かに座っていた。
「え? 何ここ?」
「私、轢かれてその後……」
「あっれ? 確か俺、残業してて……意識が遠くなって……え〜と?」
「え? ココって……ファンタジー系でよくあるヤツ!?」
「僕は中学校に登校してたハズなのに」
五人の男女は、突然の出来事に慌てて混乱していた。
そこで王様が声をかけた。
「其方達よ、突然の出来事に混乱しておるだろう。申し訳ないと思っておる」
王様はイスから立ち上がり、五人に話しかける。
五人も王様の話を動揺しながらも聞く。
「だがもうすぐ百魔夜行(ひゃくまやぎょう)が訪れる。だから単刀直入で言おう」
王様は頭を下げて、他の皆んなも頭を下げてこう言った。
「どうかこの国を救ってくだされ……五人の勇者達よ」
そう言いながら王様は、みんなにはバレていなかったが、血が出るほど手を握りしめて震えていた。
*****
『キシャーーッ!!』
「クッソ!」
「何て数だ!」
目が覚めたら森の中にいて、更に怪物どもに囲まれていた。
無茶苦茶な話だと思うが、本当にそうだからそう言うしかない。
そして今は怪物どもを相手にしてる所だ。
「おいまた緑色の怪物が出て来たぞ!」
「オークっスよオーク!」
ヤフェスとライは、そのオークにグロック17とM4カービンの弾丸をぶち込む。
オークは、胸や腹に弾丸をくらって怯む。オークは体を大きな両腕でガードする。
ダメージは与えてるとは思うが、致命傷という程ではないようだ。
「クソ! 脂肪の塊の怪物が!」
俺は、USPタクティカルを構えて弾丸を.45ACP弾の入ったマガジンを装填する。
リアサイトを覗き、両腕でガードしているその両腕の隙間を狙って、オークの首に弾丸を二発撃ち込む。
オークはフラフラっと体を動かして、自分の首を確認する。
首に二つの穴が空いていて、そこから大量に出血していた。
『ガッ! ウガァ!?』
血を止めようとオークは手で止めようとするが、それでは止まらずに大量に出血してバタンと前に倒れる。
死んではないが、その出血では立てないだろう。それにほっとけば多量出血で死ぬ。だが、頭を撃って早く始末しよう。念には念を。
俺は、倒れているオークの頭に弾丸を撃ち込んだが効果は薄かった。
オークの頭は硬いのか、弾丸はめり込んでいる程度で収まっていた。同じ箇所に撃てば脳みそを撃ち抜けそうだが。
まぁいい。あのオークは出血多量で死ぬ。ほっとこう。
オークは、体は脂肪で弾丸があまり通らないが、首が脆くてそこは弾丸は通る。一応、弱点が分かった。
「緑色の怪物……いやオークには、首を狙え! それか足を撃って動けなくさせろ!」
「できたらやってるよ!」
俺はそうアドバイスしたが、ヤフェスは小さい怪物……たしかゴブリンだったか? ゴブリンの大群にグロック17の弾丸を撃ち込んでいた。
『やっぱり逃げよう!』
『怪物共が何処に何体隠れてるか分からないんだぞ! コイツらエリート隊と一緒にいた方が、生存率があがる!』
テロリスト達は、AK47を乱射しながら叫ぶ。
コイツらは敵だが、今は一時休戦の状態だ。顔に布を覆っているけど、息しずらそうだ。
それにしても、ライとテロリスト三人がアサルトライフル系の銃を持っているが、俺達のアサルトライフルは何処に行ったのだろうか。
俺とガーディ隊長は一丁のハンドガン系の銃しかない。ヤフェスだけ二丁のハンドガン系の銃を持っていた。
『ぐあっ!』
そんな呑気な事を考えていたら、テロリストの一人が右腕に矢が刺さっていた。
「北西側の木の上に、弓矢を持ってるやつがいる! それに南西側に三体!」
ライが叫ぶ。
すぐにガーディ隊長がcolt M1911A1(ガバメント)を構えて、リアサイトを覗いて北西側の弓矢を持ってるゴブリンを撃ち抜く。
「そろそろ移動した方がいいかもしれん」
ガーディ隊長は、弾丸を装填して言う。
俺は、南西側のゴブリン三体をUSPタクティカルを構えて撃ち抜く。
「よくスコープ無しで狙えるっスね」
「移動って、どこに移動するんだよ!?」
ヤフェスはまた現れたオークに、デザートイーグルの弾丸を頭にぶち込んでいた。
流石に、頭が硬いオークでも.50AE弾には敵わないようで、脳みそを撃ち抜いていた。
「とりあえず怪物共から逃げる。それに見ろ。怪物共があまりコチラに近づかないでいる」
確かに、ゴブリンやオーク共はコチラに近づかないで木に隠れたり、物を投げたりしていた。
流石に俺たちに近づいたら、突然大きな音がして死ぬ、というのを分かったか。しかも離れていても頭を撃ち抜かれて死ぬ。
怪物達は警戒している……というより恐怖しているように見える。
怪物でも恐怖は感じるものなのか。
どちらにせよ、今がチャンスかもしれない。
「誰かスモークかスタングレネードは?」
「両方俺が持ってる」
ガーディ隊長が聞き、俺が答える。
「よし。俺が合図したら、スタングレネードを上に投げろ。そしたら北西の方向に逃げるぞ。怪物共の数は北西側が少ないからな」
俺は安全レバーを握りしめながらスタングレネードのピンを引き抜く。
「おいお前! 動けるか!?」
ガーディ隊長は、矢を腕に受けたテロリストの一人に話しかける。
『う、うん。大丈夫』
コクコクと頷く。
「よし。準備はいいな?」
怪物共は、まだ警戒して近寄って来ない。北西側は手薄だ。
今がチャンスだ。
「GO!」
ガーディ隊長が合図を出して、上空に投げようとしたその時……
ピピィーーー!!
どこからか笛の音が響き渡る。
そしたら怪物共は、背を向いて森の奥へと行き、いなくなってしまった。
「……えぇ?」
ライは声を漏らし、疲労からか尻餅をついてしまった。
「ちくしょうが! 何だってんだよ!」
ヤフェスも愚痴りながら座り込んだ。
テロリスト三人も座り込んだ。
「……少し休憩して移動するぞ」
ガーディ隊長は、ゆっくり座り込む。流石に隊長でも混乱しているのか、頭を片手で抱えていた。
俺はピンを戻して、スタングレネードを元の所に戻す。
この怪物共は一体……ライは、ゴブリンとオークと言っていた。あのファンタジー世界で出てくる怪物の事なのだろうか?
そんな事がありえるのだろうか? 現に奴らの死骸がある。
「……」
ハァ……何か疲れた。少し休もう。
俺は水筒に手をとって水を飲んだ。
その時、俺の胸はまるでフルマラソンしたかのように高鳴っていた。
ただの 勇者 DIO @biode
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