現実7
病院のトイレで用を足して病室に戻ると、そこには駿河が居た。ベッド脇に設置された椅子に座っていた駿河は、病室のドアを開けた僕と目が合うとぽつりと呟いた。
「昨日、風花の夢にたどり着いた」
「……知ってる」
「今夜も風花の夢に潜るつもりだ」
「……だろうね」
「なぁ。風花はやっぱり、目覚めたくないんだろうか」
「…………」
「だとしても、やっぱり俺は、風花には目覚めてもらわないと困る。これ以上、誰かを失うのは嫌なんだ。もう十分、後悔は味わったつもりだ」
「それでも僕は、風花の気持ちを汲み取るつもりだよ」
「……だろうな。そろそろけりをつけよう」
駿河はそう言って立ち上がると、僕の横を素通りして病室を出て行った。
「駿河の言う通り、そろそろ終わらせるべきかもしれない。だけど風花はきっと、それを望んでいない」
僕は病室の窓に手を掛けて、街を見下ろした。きっとこの世界を現実だと受け止めるには、今の風花にはできないだろう。もう少しの間、風花には準備が必要だ。そのために僕は、風花が納得いくまで夢を見させてやりたいと思っている。
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