妹に会うために魔王を倒すと決心した俺だがチートもない上に最弱ステータス。集めた仲間も残念なやつらばっかりで、こんなパーティーで魔王は倒せるのだろうか。

第6話 メタスラ狩りの予兆

「はぁ……おはよう皆……」

「え、ちょハルト大丈夫？　クマがすごいけど……」

「一睡もできなかった」

「何で一睡もできかったんですか？　とりあえず回復魔法かけときますね」

　昨日は散々な目にあった。本来ならゆっくり休めた所だったのだが……

「おはようハルト。昨夜はいい経験をしたな」

　こいつのせいで俺は全く眠れなかった。急に俺と一緒に寝てくれとかなんか意味不明なこといいだしてそれで逃げていたのだ。

「え、ハルト？　眠れなかったって、昨夜はいい経験をしたって……」

「セレナ勘違いするなよ？　何も起きてないからな！」

「？　お二人共何のお話をしているんですか？」

　ローラ、お前はそのまま純粋なままでいてくれ。

「ジークお前クビだ」

「「！？」」

「なんでだハルト！　俺がいて迷惑か？」

「大迷惑だよ！　おかげで昨日眠れなかったんだぞ！　俺にはその気ないから！」

「え、なんで急にクビになんてするんですかハルトさん！　理由を述べてください！」

「お前は知らなくて大丈夫だ。こいつが俺の近くにいると危ないって俺の第六感が言ってんの！」

「いやいやハルト。あんたが我慢してくれれば超優秀なソードマスターが仲間に居てくれるのよ？」

「その前に俺の体がもたないんだよ！！」

　いつ俺とジークの体が合体するか分からない。なるべくこいつと接点を持ちたくなかった。

「ならわかったわハルト。多数決よ！　ジークのクビに反対する人は手を挙げて！」

　俺以外の3人が手を挙げる。俺に拒否権はなかった。

「てことでジークはこのままパーティーメンバーてことでいいわね？　ごめんねジーク。ハルトは好きにしてくれていいから」

「わかった」

「分かるな！　てかお前何勝手に俺を売ってんだよ！　ふざけんなよ？　そっちがその気ならこっちだって打つ手あるんだからな？」

　俺はセレナ向けて状態異常スキルを発動させた。発動したのは麻痺。

「う、動かない……ちょ、ろ、ローラァァァ！！！」

　動かない隙に俺はセレナの脇をくすぐった。

「ちょごめんハルト！　あひゃひゃ！　ごめんごめん！　もう絶対にやらないからあ！」

「俺を怒らせたらこうなるからな、覚えとけよ！」

　これでセレナはしばらく俺に反抗できないだろう。

『ねえあれ見て？　ギルド内で堂々と変態プレイをするなんて』

『なんて鬼畜な……可哀想』

　本当に可哀想なのは俺のはずなんだけど。とりあえずローラに麻痺を解いてもらった。

「まあクビにはしないけど、襲うなよ？」

「フリだな？」

「違う！」

　もう本当に不安で仕方がなかった。

　セレナがレベル上げをしたいという事で適当にモンスターを狩りにいった。

「ファイア！！」

　いつ見てもこの魔法の威力はすごいな……

「ふっ！　この魔法だけは誰にも再現できないでしょうね！　これが最強の魔法よ！」

「すごいですセレナさん！　私感動しました！」

「倒せたのオーク2匹だけなんだけどな」

「うっさい」

　この燃費の悪ささえなければ最強なんだけどな……

「あとは俺も少しレベルをあげさせてくれ」

　追加で現れたオークを発見する。

「おいハルト。昨日みたいにまた運上昇が発動したらどうする」

「心配するなジーク。今回はオークに接近しない」

「どういうことだ？」

　俺は矢を1本取り出しで深く握る。そして状態異常魔法スキルを発動した。矢は紫色に光っている。

「なるほど。矢にスキルを発動させて、遠距離で状態異常攻撃を仕掛けるのか」

「ご名答」

　弓を引っ張りオークを射抜く。威力は低く倒すことはできない。しかし毒が付与され動きが鈍くなっている。その隙を狙って接近し剣でオークを倒した。

「なんかハルトが強くなってくことに抵抗があるんだけど」

「そこは喜べセレナ」

　さっきオークを倒したことでまた1つレベルがあがった。状態異常魔法スキルかなり優秀だな。

「もう日も暮れてきましたし、そろそろギルドに帰りませんか？」

「そうだな」

　4人でギルドに向かう、その時だった。目の前には銀色の1匹のスライムが現れた。

「！？　メタルスライム！　メタルスライムよ！」

「てことは……もうすぐあのイベントが起きるのか」

「えっと、私メタルスライムを知らないのですが、わかりやすく説明してくれませんか？」

「メタルスライムはね、倒すとスキルポイントと大量の経験値を得ることができるの！」

　まじか、なら是非とも倒したい！　俺はメタルスライムに状態異常攻撃スキルを発動する。しかしメタルスライムに変化は起きない。

「無駄よ！　メタルスライムは魔法耐性が非常に高いわ！　私くらいの魔法なら一撃だけど、くっ！　なんでオークなんかに魔法を使ったの」

「まあセレナ。メタルスライムが来たということは恐らくあれが来る」

「分かってるわ。あそこで大量の経験値とスキルポイントを稼いでみせるわ！」

「なあ、一体何が起こるんだ？」

　セレナとジークはこの街にそれなりに住んでいるから分かるが、俺とローラは何一つとして分かっていない。

「メタスラ狩りよ！　1年に1回だけ大量のメタルスライムが発生するの！　ハルト達も強くなりたいのならメタスラをたくさん狩るのが1番よ！」

「だったらそいつを狩るとするか」

　剣でメタルスライムを切りつける。しかし……

「全然刃が通らねえ！　固すぎるだろ！」

　メタルスライムの固さは異常だった。

「今のハルトの力じゃメタルスライムは倒せそうにないわね。今だとジークしか倒せなさそう」

　てことでメタルスライムはジークが倒した。

「やっぱメタルスライムはいいな。さっきので2レベルもあがったぞ」

　うーん。戦力を上げるためにもメタスラ狩りで多くのメタスラを狩りたいところだが、今の実力じゃ全く倒せそうにないな。

「どうにかして倒せたりできないだろうか」

「だったらダンジョンに行かないか？」

「何でだ？」

「ダンジョンにはお宝が眠っている。もしかしたらその中にメタルスライムを狩るのにピッタリな武器があるかもしれない」

　確かに今の武器は支給された初心者向けの武器だからな。もっと強い武器なら俺でもメタスラを倒せるかもしれない。

「そうと決まったらダンジョンに行こうか、明日でいいか？」

「いや、明日は用事があるから無理だ。明後日でも大丈夫か？」

「大丈夫だけど、何の用事だ」

　それについて尋ねるとジークは少し悲しそうな表情をして

「ちょっと弟に会いにな。あと俺は毎週1日は弟に会いに行くから分かっていてくれ」

「わかった」

　予定を立てギルドにたどり着いた俺たちは解散して明日は自由という事にした。

　2日が経ちダンジョンに向かう日が来た。

「ジーク、弟は元気にしてたか？」

「……さあ」

「さあって、まあいいか」

　少し元気のなさそうなジークだったが、俺は気にせずダンジョンの話へと切り替える。

　もしこの時俺がジークに深く話を聞いていれば、察することができていたら、あんな事は起きなかったのかもしれない。元気のなかった理由が分かるのはまだ先の話である。

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