第3話 森の中の出会い
「体痛ってぇ……」
俺は人生初めての野宿というものを経験した。暑くも寒くもないちょうどいい気候だったが硬い地面の上で寝るのは厳しかった。
「ハルトおはよ! よく眠れた?」
「眠れるわけねえだろこんな状況で」
あの後受付嬢に話を聞いたが、ここの近くに宿はあまり無いそうで、値段も高いようだ。
「せめて1つくらい泊まれる宿屋あってもいいだろ……」
ちなみにこの街を中心に活動している冒険者は家やアパートに住んでいるらしく野宿はしていないらしい。
「はぁ……日本に帰りたい」
まだ異世界に来て1日しか経っていないのにもうホームシックが来るとは、こんなんで本当に魔王倒せるのかな?
「にしても手軽に倒せるスライムのクエストが受けれないのは不便だな」
今の俺たちはステータスが異様に低い雑魚と連続で魔法が出せない魔法使いとあまりにも弱すぎる。
「ねえハルト。ダメ元でパーティーメンバーを募集してみるのはどう?」
「俺らみたいな雑魚と喜んで組んでくれる人なんかいないだろ」
「いやもしかしたら……いないわね。てか私を勝手に雑魚扱いするのはやめてくれる? 一応火力だけは一級品なんだからね?」
「火力だけはな?」
「ごめんなさい」
にしても比較的安全に倒せるスライムのクエストが受けれないということは、それなりに難易度が高いクエストを受ける必要がある。
「セレナ。なるべく弱いモンスターのクエストを受けてくれ」
「いいけど大丈夫? スライム以外のモンスターだとまじめにハルトは死んでしまうかもしれないよ?」
「それについてなんだが、ひとつ試したいことがあってな。少し付き合ってくれ」
昨日得た報酬で弓矢を購入してみた。そもそも敵に近づかず遠距離で攻撃すれば安全に狩れるのでは? と考えたのだ。
「じゃあこのゴブリンのクエストを受けるわよ? 本当危ないと思ったら急いで引き返してね?」
「俺もこんな所で死ぬわけにはいかないからな。気を引き締めて行く」
早い所レベルをあげて並のステータスは手に入れたい。俺とセレナはレベルをあげるべく、ゴブリンの生息地である森へと向かった。
「あのゴブリンだけ単独行動してるな。最初にあいつからやるか」
ゴブリンといえば集団で行動して、数の暴力で人々を襲う習性がある。孤立しているゴブリンがいるのはラッキーだった。
「あのゴブリンは私にまかせて! こんくらい朝飯前よ!」
「お前魔法そんな簡単に使って大丈夫なのか? もっと大事なときに残しておくべきだろ」
「いや1匹だけのゴブリンなら魔法を使わなくても倒せるわ。魔法使いだからって侮らないでね?」
そう言うとセレナは杖でゴブリンを殴り始めた。あまりにも魔法使いとは思えない光景で思わず鼻で笑ってしまった。
「これでとどめよ!」
セレナが叫んだ瞬間、俺は矢を放つ。矢は綺麗にゴブリンの頭を貫きうまく倒せた。
「ちょっとハルト! 私の獲物だったじゃない! 邪魔しないでよ!」
「ふっ、これが漁夫の利ってやつだ」
矢は何本もあるわけじゃないからな。セレナが弱らせた所を漁夫ってレベルをあげまくろう。
「今度は三体か。セレナいけるか?」
「大丈夫よ。三体くらいどうってことないわ」
そして杖でゴブリンを殴り始めるセレナ。この光景何度みても笑えるかもしれない。
「あいつは弱ってるな……今だ!」
パシュン! と音をたて矢がゴブリンにささる。俺は全てのゴブリンを弓で倒すことに成功した。
「ねえハルト! さっきからそれやめてってば! 私のレベルが一向にあがらないじゃない!」
「悪い悪い。次からやめる」
するとゴブリンの援軍がやってきた。といっても2匹のみだったのでセレナに闘わせる。そして俺は弓でうまいとこ漁夫った。
「ハルト?」
やばい目をしたセレナがこっちを見る。
「次の獲物はお前だ!」
「ちょ悪かったセレナ! 謝るから杖で俺を叩かないでくれ!」
「いい加減にしなさいよ! 次やったらあんたに魔法食らわせるからね!」
ゴブリンよりも数倍こっちの方が怖かった。もう矢も底をつきかけてるし、漁夫るのはやめよう。そう思った瞬間、奥の草からゴソゴソと音がなった。
「来るぞ! セレナ!」
現れたのは二十数匹ほどのゴブリンの群れ。流石に俺にはどうしようもない。しかし……
「『 ファイア』!!」
爆風が響き渡る。ゴブリン程度の相手ならセレナの魔法で一掃だ。
「流石ですセレナさん」
「今回は結構爽快だったわね。今までの事はチャラにしてあげるわ」
それなりにゴブリンを倒すことにも成功したし、そろそろギルドに帰って報告をしようと帰ろうとした、その時だった。
「おいセレナ。あの草むらまた揺れてるぞ!」
「まずいわね。非常にまずい」
またゴブリンの増援だろうか。俺の矢は残り少なく、セレナは暫く魔法を使えない。攻撃の手段はほとんど残されてなかった。
「来るぞ! セレナ!」
2人で逃げの姿勢をとったが、草むらから出てきたのはゴブリンではなく、1人の少女だった。
「おい、大丈夫か!? ボロボロじゃないか……」
「!? お願いです! 私を連れていかないでください!」
少女はただひたすら俺らに怯えている様子で、体を震えさせていた。
「何を勘違いしているか分からないが俺たちは敵じゃない。とりあえず街までいって治療してもらおう」
「大丈夫? 歩ける? 歩けないなら私の背中に乗ってもいいわよ?」
「い、いえ大丈夫です。歩くことはできます……」
しかし、このあたりはモンスターがいて危険だ。もしかしたらゴブリンの増援がまだいるかもしれない。
「きついかもしれないが少し急ぐぞ」
「いえ、本当にありがとうございます」
何故こいつは俺たちを見て怯えたのか、なぜあんなにもボロボロなのか、知りたいことは山ほどあったが、急いで街に向かうことにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー最後まで読んでくれてありがとうございます!
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