(四)-5(了)

 数馬はその刀を右の刀で受け流そうとしたが受けきれなかった。数馬は何とか身を捻って右を引くようにしてはいたものの、右肩からまっすぐ下へと斬られた。そして同時に右手の刀を落としていた。

 ただ、同時だったのは刀を落としたことだけではなかった。左手で持っていた刀を右内の腹にまっすぐ突き刺していたのだ。そして右手の刀が落ちてから抜いた。

 黒井右内の動きは止まっていた。その痛みに耐えているのか、苦渋に満ちた顔になっていた。そして腹を押さえ、刀の先をこちらに向けながら右内は後ずさりし、橋を渡り、拝殿の方へ退いていった。

 数馬は肩の痛みでその場でへたり込んだ。そして傷の痛みで意識を失った。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

堕ちた剣豪と北の剣士 筑紫榛名@次回1/19文学フリマ京都9 @HarunaTsukushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画