(二)-7

 そこへ、別の岡っ引きの忠五郎が十手をこの男に向けながら「ご用だ!」と大声を上げた。

 左内はそれを見て「よせ!」と声を上げた。

 左内の声とほぼ同時に男は刀を水平に振った。その直後血しぶきが上がり、忠五郎の悲鳴が周囲に響いた。男の刀は忠五郎の顔面を斬り、その両目から光を失わせていた。

 忠五郎はもともと町人で、暴力事件を起こした元罪人でこのような荒事には慣れていた。だからこそ、その男に向かっていったのだろう。しかし、忠五郎では全く敵わなかった。


(続く)

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